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12月25日、22時。公安局の屋上から見下ろす景色はいつもと変わらないはずなのに、隣にいる彼と、旧時代で言うところの"クリスマス"とやらのフィルターがかかっているせいか私は妙に浮き足立っていた。
もしかしなくても、この状況に多少なりとも何かを期待していたのかもしれない。

「狡噛さん、さすがに寒いのでそろそろ戻りませんか」
「俺はこれが吸い終わったら戻る。あんたは先に戻ってて構わないぞ」
「……鈍感」

まあ狡噛さんの鈍感さに呆れるのは今に始まったことではないけれど。そもそも屋上に来たのだって私が勝手について行っただけに過ぎない。
それはもちろん、少しでも一緒にいたいから。

「じゃあなんだ。監視官は俺にどうして欲しい?」
「きゃっ……!」

吸っていた煙草を潰したかと思えば、急に肩を抱かれるようにして引き寄せられるまま狡噛さんの腕の中へと収まった。完全に身動きが取れないこの状況。緊張で吐いた白い息は、やがてしんしんと降る雪とともに消えていく。

「力ずくで局内に引き戻したい?それともこのままでいて欲しい?……あんたの望みはどっちだ?」
「そ、れは……」
「ま、答えがどうであれ、俺はあんたの答えに従うまでだが?」

からかうような声のトーン。果たしてこれは、私の気持ちをわかった上で言っているのだろうか。だとしたら意地悪すぎではないだろうか。
そう考えるとちょっと癪だけれど……でも、今日という日にかこつけてたまには勇気を出して素直になってみせようか。


お題:身動きを取れなくされ優しく従わせるように「どうして欲しい?」
お題生かせてない&書ききれなかったのでそのうち短編にしたい候補。
2017/12/27 (Wed) 13:09
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