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それは何の前触れもなく起こった。
気が付けばあれよあれよという間に押し倒されていたからだ。一体全体どうしてこうなった状態である。

そのまま、低体温の彼のそれが私の唇に押し当てられる。しかしどこか微かに温もりがあってそれが何だか気持ちいい。突然のそれに驚きはしたものの、突き放すこともなく、ただ彼を受け入れる。
しかしどうしたものか。欲など滅多に持ち合わせない彼がこんなことをするなんて。

「……これで終わり?」

無意識にそんなことを口にしていた。物足りないと感じている自分がいたとは驚きである。

「それは僕を煽っているのか?」
「どうかしら。そういう風に見えた?」
「君は気付いてないだろうが、君は今とても挑発的な表情をしている」

それを言うなら聖護もなんだけどな。それはまあ、言わないでおこう。

「この先がお望みなら応えてあげるのもやぶさかではない」

絡められた指先にやんわりと力が入る。

「んー、でも今はそういう気分じゃないかな」
「ほう」

どうせなら――

「もう一回キスして欲しい、かな。今度はもっと甘いの」
「……それはどうかな」

そう言った後の聖護の表情が一番挑発的だな。そんなことをぼんやりと思いながら金色の瞳にのまれて行った。


お題:槙島が夢主を押し倒して唇を奪うと「これで終わり?」と挑発的に微笑む夢主
2017/12/23 (Sat) 13:07
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