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目が覚めたら保健室のベッドに寝かされていた。試合のスコアを付けていたはずなのに……途中から記憶がない。

「あれ、監督……?」
「お、気付いたか」
「えっと、もしかして私……」
「部活中に急に倒れたもんだから驚いたぞ」
「あ、やっぱり……。その、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
「ま、ただの過労で良かったよ」

「チームのために尽くしてくれる事はありがたいが、無理はするなよ」そう言って先生の大きな手がポンと私の頭に乗せられる。その優しい温もりに、優しい声色に、自然と頬に熱が集中して先生から目を逸らす。
先生に触れられただけで嬉しさで心は満たされる。けれどそれは同時に胸をきつく締め付けていくものでもあって。
年齢、立場――私たちの間に立ち塞がる壁は乗り越えるには高すぎる。でもそんな現実を突きつけられても先生を諦められない自分がいる。

「んじゃ部活が終わって生方が来るまでしばらく横になっておけ」
「あっ、先生っ……」

だから今だけはどうか――その腕に触れる事を許して欲しいのです。

「どうした?」
「まだ……行かないで、下さい……」
2017/01/23 (Mon) 13:02
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