ss
「……人混みは嫌いだわ」
「自分の存在が雑踏の中でかき消されてしまいそうだから?」
「ええ。私たちはいわば半透明人間のようなもの」
「誰の印象にも残らず、見えているのに見えてない存在……」
「このまま人混みにのまれて、誰も私を認識せずにこの体をすり抜けて行って、いずれ私という存在がなくなるんじゃないか……なんて事をいつも思うの」
「『誰一人知る人もない人ごみの中をかき分けていく時ほど、強く孤独を感じる時はない』……僕たちは特異体質ゆえに、他の人間よりも人一倍それを強く感じるのかもしれないね」
「そう思うと、システムに従ってのうのうと生きてる人間に比べたら、常に思考している私たちは案外充実している人生なのかしら」
「『人間は考えるために生まれている。ゆえに人間は、ひとときも考えないではいられない』とパスカルは言っている。だから僕たちが気に病む事など何もない」
「フッ、ずいぶんと皮肉めいた事を言うのね」
「僕たちは僕たちなりに人生を楽しめばいいってだけの話だよ。君はそうは思わないのかい?」
「ううん、その通りだと思うわ」


何が言いたいのかわからない上にオチもない。
2016/10/24 (Mon) 12:56
- ナノ -