「凛って名前、女の子みたいで可愛いよね」
「あ？」

突然放たれた言葉に反射的に声が低くなる。
名前のことは昔から言われてきたことだ。可愛いと言われるだけでも不快なのに、相手が女なら尚更だ。

「他の男の子たちから凛ちゃんって呼ばれてるよね。私も呼んでいい？」
「いいわけねぇだろやめろ」
「なんでよー。じゃあリンリンは？パンダみたいで可愛くない？」
「俺はパンダじゃねえ」

一刀両断すればあからさまにむくれた表情を見せて「凛くんつまんなーい」と愚痴をもらした。うるせえ余計なお世話だ。

「パンダが嫌なら勇気りんりんリンパンマンはどうだ！ちょうどあそこの棚の上に置いてある箱が届かなくて困ってたところなんだよ」
「脚立使え」
「そんな薄情なこと言わないでさー助けてリンパンマーン！！」
「チッ、わかったから大声出すのやめろクソが！」

俺の言葉に満足気な表情を浮かべて「ありがとう凛くん」と述べる彼女の笑みにからかいが含まれていないのがムカついてしょうがねえ。
……黙ってりゃそこまで悪くねぇのに。
なんてことは死んでも口には出さねぇけど。


お題『黙ってれば可愛いのに』
勇気りんりんリンパンマンというしょうもないネタを使いたかっただけ。