ss
※ほぼほぼ短編
※夢主が姉


私にはひとつ上の兄とひとつ下の弟がいる。
兄は昔からかっこよくて頼りになって私はいつも兄にべったりだった。けれど弟の郁弥が生まれてからは姉としての本能が目覚めたのか、物心がついた頃には兄が私を可愛がってくれたように私も郁弥のことを可愛がるようになっていた。小さい頃から泣き虫で怖がりでいつも私や兄についていた郁弥はそれはもう本当に可愛くて可愛くて仕方なかった。ブラコンと言われても否定する気もないくらい自慢の弟だ。それは今でも変わらない。
いつの間にか背は私より高くなり、呼び方も『姉ちゃん』から『姉貴』に変わっていった。少し寂しい気持ちもするけどそれもそれで悪くないと思うから私のブラコン具合も大概である。

「ねぇ夜ご飯食べるだけなのに買いすぎじゃない?しかもお酒ばっかり」
「えー?だって初めて郁弥の家に遊びに行くんだよ?超楽しみにしてたんだよ?そりゃ飲むしかないでしょ!」
「場所関係なく姉貴がただ飲みたいだけでしょ。一応言っとくけど僕まだ飲めないからね」
「そうなんだよね〜。あー郁弥がハタチになったらすぐにお兄ちゃんと一緒に朝まで付き合わせるのに〜!」

お兄ちゃんと飲んでてもそもそもお兄ちゃんはアルコールに弱いから数杯ですぐに落ちるし寝るしで話し相手がいなくて、結局私一人で飲むのが定番となっているから面白くない。でも郁弥もそんなに強そうではないから、きっと三人で飲んでも私だけが残っていそうな気がしているけど。

「兄貴も酒癖悪いし姉貴もいつも以上に絡んでくるから嫌だよ」
「そう言いつつも荷物持ってくれるし郁弥はほんと素直じゃないね。昔はピュアすぎるくらい素直だったのにぃ」
「……うるさい」

小さく体当たりをすればそっぽ向かれてしまった。こういうところが可愛くてたまらないんだよなぁ。

「小さい頃は『兄ちゃんと姉ちゃんと一緒に寝る!』っていつも言ってたのにねぇ」
「……そんな昔の話とっくに忘れた」
「ねー久しぶりに一緒に寝る?どっちにしろベッドひとつしかないでしょ?」
「はあ!?ば、ばっかじゃないの!いくつだと思ってんだよ、寝るわけないだろ!」
「なぁに、まさか大好きなお姉ちゃんをソファーで寝かせる気〜?酷いなぁ」
「僕がソファーで寝るからベッドは姉貴が使いなよ」

んんーそういうことじゃないんだけどなあ。まあ見るからに頬がちょっと赤くなってるし照れ隠しなんだろうなきっと。というか大好きというところは否定しないのね。我が弟ながら本当にこういうところが可愛すぎて困る。頬が緩むのを止められなくてにやけていたら「何?気持ち悪いんだけど」とオブラートに包まれてすらいない一言を投げつけられた。さすがにちょっと傷付くよ。

「いい加減早く弟離れしてくれないと困るんだけど」
「郁弥だって人のこと言えないくせにー」
「とりあえず僕のためにも彼氏作りなよ。姉貴が彼女だなんて苦労しそうだけど」
「ちょっとそれどういう意味?」
「そのままの意味」
「まー正直な話、郁弥とお兄ちゃんを上回るいい男がいなくてさー、まだしばらくは無理かも」
「そんなこと言ってると一生できないよ」

そんなこと言われたって本当にいないんだからしょうがない。郁弥だって何だかんだ言ってこうして当たり前のように私が買った荷物を持ってくれる。普段メールの返事は毎回返してくれるわけじゃないけど、私が言った何気ない一言を覚えていてくれたりして『姉貴が食べたいって言ってたスイーツ今日発売だって』なんてわざわざ送ってきてくれるんだから、きっと郁弥だって私のこと口で言うほど嫌じゃないと思うんだけどね。さすがにこれを言ったら拗ねちゃうだろうから黙っておくけど。
2021/11/04 (Thu) 01:17
- ナノ -