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「アキくん誕生日おめでとー!はい、これ誕生日プレゼント!」
「なんじゃあ?その袋」
「あれだろぉ〜なんかめでたい時に使うゴシュウギブクロ?とかいうやつだろ」
「……オイ」
「ん?」

数日前、確かに何が欲しいか聞かれた。しかし今は特に欲しいものがなかったから「特にない」と答えた。だがその答えに納得のいかない顔を浮かべたので冗談半分で「強いて言うなら金だな」と漏らした。冗談と言いつつも結局のところ金があって困ることはないのは事実だ。が、そういうことではない。
こいつらと生活し始めて何かと金がかかっているし、かかっているのは金だけではないのだが、今はどうでもいい。冗談半分で言った俺にも非はあるが、そんな戯言を本気にする奴の方が明らかに悪いだろう。誕生日プレゼントに現金だなんて夢もロマンもへったくれもない。こんなの、ある意味マナー違反みたいなもんだろ。

「誕生日に現金を送る奴があるか」
「え〜!?お金が欲しいって言ったのはアキくんじゃん!いくらあったって困らないでしょ?」
「そういうことを言ってるんじゃない」
「いくら入ってるんじゃ!ワシにも見せろ!」
「諭吉がいちにいさん――」
「お前らはあっち行ってろ!」
「早パイ〜誕生日にまで怒んなよぉ〜」
「お前らのせいだ」
「じゃあ何なら良かった?色々考えたけど思い浮かばなかったんだもん」
「何もいらない」
「酷い!そんなストレートに言わなくても……」
「物はいらない。本当に欲しい物はない。いつも通り、メシ作ってくれたらそれで十分だ」
「そんなことでいいの?」
「それが一番いい。デンジとパワーのメシ、なまえも食ったことあるだろ」
「うーん、これは素直に喜んでいいものなのか……。でもアキくんがそう言うならこれからも美味しいの作るよ!」

4人で過ごす時間――なまえがいれば何もいらない、なんて気取った言葉はさすがに言えない。
2021/06/08 (Tue) 15:51
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