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「これを機に、ってわけじゃねーけど七瀬ちゃんともっと仲良くなりてーし、あだ名で呼び合うっていうのはどーよ?」
「いいですね!」
「陣平ちゃんもオーケー?」
「あ?いいわけねーだろ」
「じゃあ俺、七瀬ちゃんのこと名前で呼んでいい?」
「萩、テメー」
「もちろん!」

聞いておいて無視とはなんだ。松田はワントーン低い声で抗議しようとするも周囲の話し声と二人の盛り上がる声によってかき消されていく。萩原自身も元より答えなど求めていない。松田は早々に抗議することを諦めた。

「俺は周りからは萩って呼ばれてるけど、まあ水稀ちゃんの呼びたいように呼んでくれていいよ」
「でもせっかくだから誰も呼んでないあだ名がいいですよね〜」

うぅん、と水稀は顎に手を当て思考を巡らせる。ひとしきり考えた後、閃いたように発せられたそれに萩原は目を丸くした。

「お萩!お萩さんなんてどうです!?」
「……水稀ちゃん、それマジ?」
「マジです!えっ、ダメですか?」
「いや、全然ダメじゃないよむしろめっちゃ嬉しーよ」

水稀に誰も呼んだことのないあだ名で呼ばれる、萩原にとって悪いことなどひとつもない。でも、だけど。本音を言うとその呼び方はちょっと恥ずかしいかも。萩原が脳内で葛藤していると、隣からは突如吹き出した声。笑いを堪えるが如く、肩を震わせていたのは松田だ。

「お萩……お前のあだ名センスどうなってんだよ」
「バカにされてる……!?私これでも真面目に考えてるんですけど!」
「あー傑作だわ。お萩……最高じゃねーか」

なあ?と唇を噛みながら萩原の肩を叩く。松田にバカにされ、けれども言い返すことができない萩原は悔しさを込めて反撃をするように「じゃあ次は陣平ちゃんの番!」と水稀に促した。

2020/06/08 (Mon) 23:14
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