「まじ…ねえわ…」

「うるせえ」




チームの練習もなく、特に用事もなかったそんな日に珍しくあの赤崎が遊びに来ないかと誘ってきた。
熱でもあるのかと思いながら誘われたからには素直に乗っておいて、いざ赤崎の家に向かえば広がっているPS3にそれ専用のソフト達。
こいつ、ただ単に一緒にゲームする奴を探してやがったなと気付いた時にはもうコントローラーを握らされていた。




「赤崎がそんな顔で無双やってるなんて俺知らなかったんですけど」

「へー」

「写メってあとでブログに載せて良い?赤崎かわいーって盛り上がるぞきっと」

「何がどう可愛いんだよ。つーか早く選べ」

「えー…じゃあ…ッておま!三成育ててないとかおま!」




しかし赤崎と戦国無双する日が来るとは。しかもこいつちゃっかりと3Zを購入してやがる。
ガラシャちゃん可愛いなあなんて思いながら2Pキャラを選ぶ。赤崎はちゃっかり清正を選んでるから俺は…しょうがない、三成を育てるか。




「時代は三成だろ…」

「清正だろ。つか七緒、お前死んだりしたら殺すからな」

「まって正しい日本語を使おう赤崎くん」

「ゲーム内でお前が死んで俺までゲームオーバーになったらとりあえず殴らせろ」

「嫌すぎる」

「よし、とりあえず関ヶ原な」

「お前三成殺す気満々だろ!」




霧の立ちこめたそれはもう難易度で言うとかなり難しいステージをレベル1の三成でどう挑めと言うのか。武器ですら初期装備の物しかないのに。
赤崎試合中以外でも鬼や、とぼそりと呟いたら、それこそ試合中並の眼光で睨まれた。こわい。
正直ヴィクトリーの持田のあの目も怖いけど、同じ仲間であるはずの赤崎の目も同じくらい怖い。試合中なんかでも、何故か逆サイドの俺までびびってるからな。
椿は実は凄い根性をしていると思う。




「…赤崎ってほんとに鬼畜だよな…」

「まあな」

「自覚あったのかよ!」

「まあな」

「……こいつ…ゲームモードに入りやがった」




ゲーム画面から一切目を離さない赤崎に思わずため息が漏れる。集中力半端ないのはよく知ってるけど、ここでそれを発揮せんでも。
変な職業病みたいなものかねと思いながらぼーっとしていると。いつの間にか戦いが始まっていた。
馬に乗ったまま微動だにしない三成に向かっていきなり赤崎の罵声が飛んだ。




「動けこの馬鹿が!」

「うおおおごめんって!ってかいきなり怒鳴るなよ!」

「お前いきなりイエローだぞ…!」

「そんなこと言ってマジで累積して退場したらどうしてくれんだよ」

「俺が七緒を殴る」

「きゃあこわい」




赤崎の操る清正はざっくざっくと軽快に敵をなぎ払って行っている。それに対し俺の三成は基本攻撃すらまともに揃ってないから、攻撃は途切れそこを敵に突かれてんやわんやだ。
とりあえず敵をちまちま倒す前にせめてマップの視界を良くしよう。そう思って霧がかかって何も分からないマップを無視してうろうろしていたら、まさかの島左近に遭遇した。
ひいっと喉の奥が鳴いたと同時に、赤崎が吠えた。




「逃げろ!」

「ごめん駄目ハメられた!」

「くそ…ッ助けに行くからとりあえず隙見て離れろ!」

「あ、やばい今赤崎にキュンとした」

「黙って逃げろっつってんだ!」

「…あ」

「あ」




俺が左近から逃げることも叶わずひたすら攻撃を食らっている間に、清正の助けも間に合わず、無念にも三成は討ち死にした。
悲しい音楽が流れる中、俺は一言も話せずに固まっていた。隣からの殺気が凄い。

瞬時に俺の頭をよぎった作戦はこれだ。
持ち前の足の速さを生かして、赤崎に謝罪をしたあと家から飛び出てとりあえず走って逃げる。スタートダッシュはきっと逃げる気満々の俺の方が早いはずだから、なんとかな…りませんでした。




「てめえ七緒…何か言い残したことはあるか」

「正直すまんかった、さようなら」

「ふざけんなあんだけ死ぬなっつただろうがああ!」

「だって関ヶ原だもん!三成死んじゃうもん!」

「てめえええええ!」

「痛い痛い馬乗り反対!やめてえええ!」




人に馬乗りになって殴りかかってくる赤崎はそれはもう恐ろしかった。元々キレやすい奴だけど、まさかここまで怒られるとは。
結局その後に正座で無双を付き合わされて、びりびりになった足を引き摺って外に連れ出され夕飯まで奢らされた。でも、命があっただけマシだと思います。

その日の俺のブログの記事の題名は、「清正カッコイイ(・ω・)!」となった。







玖珂リクエストありがとうございました!
110225

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