∈でーえむえむそうこ∋

0704 剏詞脂ホ水木金金





「……長谷部…」

「はい、主」

「…お前を信じて…正解だったよ…」

「はい!主!」

「お前は…その…賢い長谷部だなあ…」

「はいッ!主!なので!なにか!褒美を頂けると!俺としては!とても!士気が!士気が鰻登りなのですが!」

「褒美…夕飯のおかずを一つ譲ってやろう」

「有り難き幸せ…!」

「…ところで光忠、本日の夕飯のおかずは」

「今日はロールキャベツですね…」

「ごめん長谷部…やっぱりさっきのなし!ナシ!」

「あ、主…!?」

「……」

「おかえり謙信。今回はどうだった?」

「大般若…きょうも、ぼくはとうそうをとかしてしまった…」

「おや。でも謙信自体は無傷だな?」

「長谷部がぼくをまもってくれた…」

「そうか。…なんにせよ、怪我がなくて良かったよ」

「…ぼくは…せんりょくになっていない…」

「皆初めはそんなもんだ。だから仲間に守られ、審神者に守られ、練度を上げていく。そして今度は自分が新しく来た刀を守れば良い」

「大般若…」

「あんまり焦らなくていいさ。ゆっくり着実に、だ」

「うん…」

「ふふふ…こうやってみんな大きくなっていくんだねえ」

「光忠は相変わらず母親みたいなことを言うなあ」

「そう言う大般若さんは立派にお父さんしているね?」

「そうかい?まあ、肉体年齢のせいか短刀達は可愛いく思ってしまうしな。主に言わせれば父親ムーブしてしまうのも仕方がないだろう」

「僕も何故かこう…母親ムーブをね…」

「ははは!元々の性質かもしれないな!」

「……」

「大丈夫か、謙信。疲れたか?」

「…だいじょうぶだ、薬研。ぼくはこのていどでつかれはしないぞ」

「それならいいんだが…大将は結構無理を強いることがあるからな。きつくなったらきついって言えよ?」

「…わかった」

「気を遣ってくれるだろうと思うなよ。隊長は疲労蓄積しにくいから大将が見てるステータス表記に疲労が出にくいんだ。お陰で疲労知らずと思われて連日連夜連れ回され泣きながら休ませろと言った先達がいるからな」

「わ…わかった…!」

「…さて、じゃあもう一週行こうか。長谷部は疲労が出てきているから正国と交代」

「な!…俺はまだいけます、主!」

「いけない。ステータス表記に疲労が出てる。正国、準備は良いか?」

「おう。そいつを守りながら戦えば良いんだよな?」

「そうそう。飛んできたものは全て責任を持って叩き落としてくれ」

「任せろ!」

「よし。…謙信、行こうか」

「……大丈夫か?」

「…だ、だいじょうぶだ!まだいけるぞ!」

「よし、その意気だ!行こう!」





「正国偉いぞ。偉すぎてもうなんて褒めれば良いか分かんないけど偉いぞ」

「あ?別に大した働きしてねぇだろ」

「いや…謙信のみならず太鼓鐘すらも守るとは思わなかった」

「べっつに俺は守られなくても大丈夫なんですけどー」

「へーへー」

「正国は良い子だなあ…」

「うっせぇ。でも頭はもっと撫でろ」

「よしよし」

「おう」

「っつーか!お前が前に出過ぎて俺が目立たないんですけどー?格好付かないんですけどぉ?」

「あぁ…?ンだこのチビ…」

「あ゛?」

「……っ」

「謙信」

「や、薬研…ぼくは、だいじょう…」

「大丈夫じゃねえだろどう見ても」

「慣れない戦場で気を張っていたんでしょう。無理しなくていいんですよ」

「秋田…でも」

「大将に進言する。ちょっと待ってろ」

「っ薬研!まって…!」

「大丈夫、ちゃんと見てる。今日はここまでだよ」

「っ大将…!」

「謙信、先に風呂入っておいで。光忠に準備を頼んでおいたから今丁度温かいはずだよ」

「ぼくは…!」

「焦らなくてもお前は確実に強くなってきてるよ」

「…!」

「刀装が吹き飛ぶのは仕方がない。そう言うもんだから。壊れたらまた作れば良いし」

「……」

「…あとぶっちゃけると、前不動を出陣漬けにして情緒不安定にさせた時日本号と蜻蛉切と山伏と石切丸にめちゃくちゃ怒られちゃって…」

「不動のはなしだったのか…」

「俺もあれはやりすぎたって反省してるし次同じことしたら四肢縛って山に捨てるって言われてるから…俺を助けると思って…ね?」

「そ…そうなの、か…」

「必要な休息を取ることは立派な自己管理だから。…謙信も、それは分かるだろ?」

「…わかる。ぼくは、こどもではないからな」

「うん」

「…ぼくはおふろにいってくるぞ。…主も、ちゃんとやすむんだぞ!」

「うん。お気遣いありがとう」

「……四肢縛って山に捨てるって大将…」

「あはは…流石に槍と太刀と大太刀にそれ言われたら危機感じるじゃん…?」

「まあ…反省してたなら良かったよ」

「でも未だに不動俺のこと見るとちょっとビビるんだよな…」

「そりゃそうだろ。修行に行って多少は緩和されたとは言えスパルタ教官に変わりはないからな」

「うーん…何だかんだで軍隊気質なのかな、俺って」

「主君はノリ始めたら最後、飽きるまでどんどん追い込んでいきますよね」

「う、うーん…そう?」

「僕も間近で見ていてヤバいなとたまに思ってました」

「ヤバい」

「秋田にヤバいと言われるって相当なレベルだぞ」

「……自省します…」

「そうしてください」

「だな」

「…とりあえず体力余ってる奴集めてもう一回…」

「お前全然懲りてねぇようだな…?」

「ヒッ」

「お。…日本号」

「日本号さん、グサッと。グサッと行ってください。主にここら辺を」

「秋田お前そこ鳩尾だぞ…」

「秋田…俺のこと嫌いなの…?」

「いいえ。でも主君は一度意識を失う程度の疲労を味わえば良いと思っています」

「………そう」

「凄く複雑そうな顔をしているな」

「…で?謙信休ませて自分は再び出陣ってか?」

「な、何か問題ありますか…」

「あるに決まってんだろ右腕折るぞ」

「これ…ドメスティックバイオレンスでは…」

「愛ある折檻だ」

「ほら!バイオレンス!」

「主殿、体力が有り余っておるのであれば拙僧と山にでも登ろう。出陣に拘らずとも良いだろう?」

「山伏まで来た…」

「うむ。主殿に対する場合は二人一組でと決めておるのでな」

「俺は熊か。…あの…発艦したいっていうか」

「それはこちらでも問題ないであろうに…なにか撃ちたいのであるか?」

「それはないけど…撃つのは妖精さんで俺じゃないし」

「であれば!拙僧と元気に山を感じに行こうではないか!」

「……いやあ…」

「嫌か?拙僧は主殿と長く一緒に過ごせる故、山登りは好きなのだが…」

「…誰、山伏にああいう台詞覚えさせたの」

「オレだ」

「日本号ォ…!」

「お前ああいうの好きだろ?」

「好きだけどさあ…なんか誘導されてる気がしてこう…」

「面倒な奴だな。…とりあえずこいつはオレたちが抑えとく。お前さんらは休息に入れ」

「はい!主君を、お願いします!」

「おう」

「大将、折れるなら早い方が良いぜ。じゃあお先にな」

「うん…お疲れ二人とも」

「…それで、主殿?」

「………」

「あーそうだ。長谷部の野郎が疲労で外されたこと気にしてたぜ。気が向いたら慰めてやんな」

「日本号が慰めればいいのでは」

「なんでオレが慰めるんだよ。なんの効果もねぇだろ」

「長谷部と仲いいじゃん。…俺は…山伏と山行こうかなあ…」

「うむ!良いぞ!そうとなれば拙僧は準備をして参ろう!軽食は何が良い?」

「山伏が作るおにぎりが好きだから、それがいいです」

「さ、ようであるか…うむ、うむ!あい分かった!少々待たれよ!」

「………」

「…たらしめ」

「いや実際山伏のおにぎり美味しいんだよ。塩おにぎりだけど、シンプルで。あと量が多いから好き」

「ほー」

「…信じてないだろ」

「信じてる信じてる。でも長谷部の前で言ってやるなよ」

「言わないよ。泣いちゃうじゃん」

「泣くだろうなあ。…ほんとにあいつは…これのどこがいいんだろうなあ」

「………」

「…なんだよ」

「いや、別に」

「なんか言いたいことありげな顔だっただろ。おい言えよ」

「なんもないよ」

「なんかあるだろ!言え!ほら!」

「ないって。…ないってば!あだだだだ!」

「おい日本号!お前何をしている!」

「ゲッ長谷部!」

「主にヘッドロックとは貴様…!」

「いや冗談だって!なあ、主!」

「げっほ」

「冗談で咳が出るほど締める奴があるか!大丈夫ですか主…!」

「大丈夫。…ところでなんで長谷部も登山スタイル?」

「偶然山伏に会いまして!是非一緒にと!」

「おお…」

「主殿、握り飯の準備が出来ましたぞ!また光忠がういんなーと卵焼きを作ってくれたのである!」

「あーはは…豪勢になった。…さて、じゃあ行こうか」

「うむ!」

「主、長谷部も共に…」

「うん。…じゃあ、行ってくるよ日本号」

「おう。気をつけてな」

「…そう言えば長谷部が同行するのって初めてだな」

「そうであるなあ」

「…教えてくださればいつでもお付き合いするのに、主は気付くと消えておられたので…」

「あーそっか」

「即断即決で登る故なあ…」

「山伏と盛り上がるとすぐ登るよね」

「散歩のようなものだからな!」

「ね」

「……今度からこの長谷部もお呼びください!」

「うん、気が向いたら」

「きが…むいたら…!」

「主殿のそれは、呼ばぬということであるな?」

「いやいや、そんなそんな」

「主ぃ…」

「ははは」



軽率に塩おにぎりとウインナーと卵焼きとか書いたばかりに腹が減って死にそうです(深夜)





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