∈でーえむえむそうこ∋

0702 剋O時間の君






「村正ァ!」

「huhuhuhuhuhu!」

「………」

「え、ちょ、主…?どうしたんだ…?」

「あー…大将、多分そこバレるぞ。逆の押し入れの方が良い。そっちに鶴丸が作った屋根裏への入り口があるはずだ」

「ちょっとなにそれ…俺知らないんだけど…でも使う」

「ああ、そうしな」

「薬研…なんで主は姿を隠すんだ…?」

「今から来る訪問者と顔を合わせたくないからだよ。話し合わせろよ、不動」

「う、うん。…訪問者…?」

「………huhuhuhuhu!呼ばれてませんが飛び出しました千子村正デスよ!」

「待て!お前は…っ上を着ろ上を!申し訳ありませぬ主!…おや?」

「…おや、薬研と不動ではありませんか…主を知りませんか?」

「大将なら用事があるとか言ってさっき出て行ったぜ?」

「…本当デスか、不動?」

「本当だよ。…俺たちは留守番だ」

「…おかしい…先ほどまでここに気配はあったはず…」

「主がご不在で良かった!お前は今の間に…着ろ!」

「おっと!その手には乗りません!居ないのであれば探すまで…huhuhuhu!」

「おい!」

「押し入れに退避はききませんよ!…いない」

「お前は本当に…!主がこの場にいたら叱られているぞ!」

「それはそれで本望デスが…ならばあちらか…?」

「……」

「……」

「…アナタ達いやに静かデスね…やはり主はこの部屋にいるのでは?…ここ…ではないか」

「なんの惑いもなく押し入れを開けるな!」

「蜻蛉切はそんなにカリカリして、よく血管が切れませんね」

「誰のせいでこうなっていると…!」

「まあワタシデスが。……」

「大将がここに居ないのは本当だ。あんまり部屋を荒らすと本当にあとで雷落とされるぞ」

「……ふう、仕方がない。別の場所を探しマス。それまで服は着ません!」

「く…!あいつは本当に…!」

「…そんなに気負うことないと思うけどな。大将はあいつの全裸を見ても無言で頷くだけだと思うぜ?」

「それはそうなのだが…全裸を見せるに留まれば…自分もここまで追いかけ回していない…」

「あー…そっか。村正も結構、主のこと気に入ってるもんな…」

「先日もまた自分が鍛刀されたと喜び主の寝込みを襲ったらしいのだ…」

「な!」

「そりゃすげえな」

「簀巻きにして主御自ら自分たちの部屋に連れ戻してくれたため、大事には至らなかったが」

「流石だ主…」

「ま、そうなるわな」

「…とりあえず少しでもあの脱ぎ癖をどうにかせねば…根は素直で良い奴なのだ…それをどうにか…!」

「はは…頑張れ蜻蛉切」

「ああ…では、失礼する」

「おう。………」

「…主?もう行ったよ」

「………」

「あれ、主?」

「不動、静かに」

「え。……」

「……」

「……や、薬研」

「…悪いな大将。バレちまったみてぇだ」

「うん。ちょっと天井ぶち破って降りるから二人とも部屋の端に行ってて」

「え゛っ」

「修繕は俺がするから。…動いた?」

「ああ、良いぜ」

「っふん!…っと、と」

「見つけましたよ、主!」

「あー…」

「やっぱりな。蜻蛉切撒いて戻ってきてたな」

「huhuhu…アナタ達の反応から主がここに居ることは確信していましたから」

「…村正、今俺埃まみれだからあんまひっつかないで」

「構いません。汚れればまた風呂に入れば良いのデスから」

「あっそう。…それで、今日はなんの感激を伝えに来たの」

「またワタシが鍛刀されたと聞いて」

「そう…そうだね…」

「主の顔が死んでる…!」

「熱烈だからな、村正。…にしても…見事な穴が開いたな…」

「入り込んだは良いけど身動き取れなくなって、腹立ったから壊した」

「短気デスねぇ…」

「だって前に動いても後ろに動いても何かが引っかかるし、なんかミシミシ言い始めてたから…修繕ついでに押し入れの穴も塞ぐ」

「なるほど、そこから上がったわけですね?…huhuhu…ですがワタシの前では無意味」

「はいはい…」

「相変わらずつれないデスねえ…」

「…村正、そろそろ主から離れろよ」

「おや?…おやおや、そうでした。アナタも修行から帰って以降主にぞっこんでしたね」

「ぞっこ…!…俺はただ、主を守りたいだけだ。どう見ても迷惑してるだろ」

「…迷惑してマスか?」

「上目遣いで聞くな」

「主、どうなのデス?ワタシの行動は迷惑デスか?」

「……」

「顔を背けないでください、主」

「とりあえず服を着て」

「これから脱ぐかもしれないのに?」

「風呂で?」

「ええ。…勿論、この部屋でも構いませんよ?」

「ほんとやめて。…あのさあ、何度も言ってるけど、あくまでも鍛刀率は資材と運に比例してて、俺がどうこうできる面は少ないんだって」

「それでもワタシの鍛刀率は異常でショウ」

「自分で言うか…」

「それだけアナタがワタシを欲していると言うこと…違いますか?」

「……どう思うコイツ見事に鶴丸の対比なんだけど」

「あー…なんだ…似たり寄ったりだな!」

「…とりあえず離れて。暑いから」

「いやデス」

「これはもう…鶴丸にぶつけるしかないのか…」

「化け物には化け物を理論か…」

「えっなにそれ」

「化け物とは失礼な。…主?」

「……なんか来てるぞ。…これは…」

「屋根裏から…?」

「…っおい鶴丸!そこ穴開いてるぞ!止まれ!」

「え?…え、ちょおおああああ!」

「おまえ…っ!」

「…えっなんだあの動き…気持ち悪…」

「天井裏でどんな機動力見せてるんだあいつは…」

「主、大丈夫デスか?」

「…うん。支えてくれてありがとう、村正」

「いいえ。…それにしても…受け止めてくれた主に感謝することデスね、鶴丸国永」

「び…びっくり、した…!」

「天井裏を徘徊するなと何度言えば分かるんだお前は。一歩間違えば死んでるぞ」

「付喪神に死の概念あると思うか…?」

「知らん。…ほんっとに」

「おわ!」

「はー…村正、暇なら天井修復手伝ってくれ。急務になった」

「ええ、喜んで。とはいえ修復などやったこともありませんが…」

「教えるよ。…薬研も不動も付き合いありがとう。明日の出陣についてはさっき話した通りで。何か変更点があったら即時伝えるから」

「おう、分かった」

「あ、主…俺も修復手伝おうか…?」

「気にしなくて良いよ不動。…それじゃ、解散で。用具取りに行こう村正」

「主、手を繋いでも?」

「…いいよ」

「huhuhu…」

「………な、なあ、これ」

「鶴丸、暫く眼中に入れてもらえないと思うぞ。良かったな」

「だよなあ!…うわああ…」

「主って怒るとあんな感じなんだ…」

「まだガチ切れじゃないぞ。本気でキレたら何言ってるか分からないくらい叫き散らして暴れ回るからな」

「えっ」

「あ、主…!主悪かった!謝る!ごめん!」

「…ま、夕餉にはいつも通りに戻ってるさ」

「鶴丸…頑張れ…!」



村正の話を書きたかったんだおかしいな。
村正も鶴丸も吃驚の勢いで鍛刀されます。すごい来ます。三時間だったら大体キミ。極のためにレベリング中です。





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