∈でーえむえむそうこ∋

0113 剪|札隣町疲労顔





「…わあ」

「札って仕事するんだなあ。主がといれっとぺーぱーって言うからそうなんだとばっかり思ってたぞ。驚きだ」

「……な、なあ鶴。これ主に急いで知らせた方が良いかな…?」

「ん?別に良いんじゃないか?どうせ今日中には戻ってくるらしいしな」

「そっか…いやあ…なんか俺…運良いな…?」

「御手杵、ところで何札使ったんだ?」

「えーと…確か竹だな」

「ほう、富士ですらないと。そりゃ運良いな」

「なー…何かご褒美もらえるかな?」

「それは交渉次第だろうな。…っと、悪い。放置してしまった。…ようこそ、大般若長光」

「……ああ、えーとその…あんた達も刀…だよな?」

「そうだぜ。俺は鶴丸国永。んでこっちが」

「御手杵だ。俺は槍だがな。…主は今ちょっと出掛けててな…その内戻ってくると思う」

「そうか。…ほう…これが人の身って奴か…」

「大般若長光と言やあ…長船派か。教育係は光坊に頼むかな」

「おーそうだな。じゃあ俺光忠呼んでくる」

「おう、頼んだ。…んで、その間にお前さんには色々事前情報を流し込んでおきますかね」

「何だか不穏な物言いだが…お手柔らかに頼むよ」

「もちろん!」





「ただいまー」

「戻ったぜー!みっちゃん!お土産ー!」

「太鼓鐘、転けるなよ」

「おうよ!」

「んしょ…よいしょ、っと」

「秋田、ありがとう。こっからは俺が持っていくよ」

「いえ!僕が厨房まで持っていきます!主君は休んでいてください!」

「ほんと立派になって…じゃあ、宜しくね」

「はい!お任せください!」

「…ふう…」

「戻ったか、主」

「ああ、うん。ただいま、巴」

「…酷く疲れた顔だ。…何かとかち合ったか?」

「あちらの上官が来てた。…まだ任期の浅い提督だから、ヘマこいたらしくてね。周りの住民が不安がってるってので状況確認兼ねてやって来てて、何故か俺が仲裁に入って…はあ…」

「それはご苦労だったな。…して、本題は」

「恙なく。…協定は結んできた。あまり過信はしないよう言っといたけど…あの感じじゃ当てにしてきそうだ」

「…戦力としては、どの程度なんだ?」

「小規模ではあるけど、連合艦隊を組みつつ基地に余剰戦力を置いておけるくらいはあるみたいだ。…練度がどうかは確認できなかったけど、鳳翔さんや龍驤…初代一航戦がしっかりしていたから多分、大丈夫」

「そうか」

「はあ…しっかし隣町に海軍基地ができるとは…なんなんだろうなあ…」

「…こちらにも火の粉が降りかかるだろうか」

「分からない。…でも基地があるって事は、相手があの町を潰す理由が出来たってことだ。…何があっても可笑しくない」

「……」

「索敵機は都度飛ばすつもりだよ。それは向こうにも了承して貰った。こればっかりは譲れない。…俺の本丸を奪われてたまるか」

「…何も、起きぬことを願う」

「うん。……もう溜息しか出ない」

「主、来い。…抱き締めよう」

「いや、大丈夫です」

「大丈夫な表情ではない。…突然降って湧いた問題だが余りにも憂い事が多すぎる。お前はここ一週間ずっと陰鬱としていた。…お前の近侍として、このままにはしておけぬ」

「…巴今俺の近侍じゃないじゃん」

「当番制のあれではない。…お前には及ばないが、ここに居る誰よりも軍に関しては造詣が深いと自負している。その問題点に関しても」

「えええ」

「あ、おかえり主」

「ただいま、御手杵」

「帰って早々悪いんだけど、新しい奴が…って…」

「新しい奴?…ああ、そうか。出る前に頼んでたな。誰が来た?」

「主、大丈夫か?顔色めちゃくちゃ悪いぞ…?」

「大丈夫。新顔に会わせて」

「お、おう…こっち」

「……」

「…なあ、巴。主どうしたんだ…?」

「出先で大分疲弊したらしい。新顔との顔合わせが済んだらすぐに寝かせる」

「おう…そうだな」

「ここか。…失礼、審神者入る」

「ああ、主!どうぞ!」

「…光忠…ってことは」

「やあ、初めまして。俺は大般若長光だ。…宜しく、主」

「…長船派の。初めまして」

「…何やら随分とお疲れのようだが…挨拶は改めてした方が良いかな?」

「気にするな。俺は虎落笛千。海軍所属の軍人だ。その他諸々事情ある本丸だけど、宜しく」

「ああ。…事情か」

「その辺りは僕が話しておくよ。…主は少し寝ておいで」

「…お前等は揃いも揃って人のことを寝かせたがるな…」

「尋常じゃなく疲れた顔をしているから。無理してきたんでしょう?今日の夕飯は主の好きなロールキャベツとカレーだよ」

「…やった。ちょっと元気になった」

「それは良かった」

「…じゃあお言葉に甘えて…大般若、改めてまた顔を合わせやろう。申し訳ないが、もう下がらせてもらうよ」

「俺のことは気にしないでくれ。…ゆっくりお休み」

「…はは、ありがとう。じゃあ、失礼」

「……主、俺が膝枕をしよう」

「嫌。巴の膝は固いから首痛める」

「男の膝枕はなあ…」

「それならまだ短刀の膝借りた方が気持ち良いよ」

「主もしかして稚児趣味…?」

「御手杵、ぶん投げるぞ」

「ごめん」

「……ごめんね、大般若さん。いつもはもうちょっと柔らかい雰囲気の穏やかな審神者なんだ」

「なに、気にしてない。…よく慕われて、良い主じゃないか」

「結構手の掛かる子だけれどね。…さて、大般若さんの歓迎も兼ねて…何か好物ってあるかい?」

「……如何せん…食事というものの体験がなくてだな…」

「うん、ごめん、今のは愚問だった」





「……おはよ」

「おう、おはようさん」

「…吉行だけ?」

「他にも色々雑魚寝しちょったけんど、皆大広間に向かった。丁度夕飯の時間じゃ」

「空腹には従順だ…」

「そりゃあの。…少しはすっきりしたかえ?」

「うん。…まあ寝ても覚めても悩んでも、現状はどうにもならないし」

「悩んでもしょうがないきの」

「結論、今できる最善の備えをするしかない。…夕飯前に索敵機飛ばすかな」

「…おまんはまっこと…心配性じゃ」

「しょうがない、悲観主義だから」

「ほうかえ。…ま、ともかく美味い飯食って、熱い茶でも飲んで、一息つこう、の?」

「うん。…よいしょっと」

「……千」

「ん?……んん?なに、急に肩組んで」

「わしは軍事関係には疎いき、何も役には立てん。けんど、わしはおまんの初期刀じゃ。何かあったら、真っ先に相談せえ」

「……」

「頼む。…初期刀としての、わしのちっぽけな矜持じゃ」

「…うん」

「…はー…わしがのう…もうちーっとこう…たっぱがありゃあ格好付くのにのう…」

「それは刀種に文句言って」

「長曽祢とかは打刀のくせにでかいき、あいつは卑怯ぜよ」

「卑怯とかそう言う問題か…?」

「あいつは態度もでかいきの!気に食わん」

「まだ揉めてんの…いい加減仲良くしてよ」

「わしは仲良くしようと思っちゅうけんどの?あいつがの?」

「おいおい…」

「…元気でたかえ?」

「出た。…んーっ…はあ…さて、行きますか。お腹減った」

「わしもペコペコじゃ」

「今日は俺の好物って光忠が言ってた」

「カレーかえ」

「ロールキャベツもだって。楽しみだなあ」

「おー……って、大般若の奴は現界初料理がカレーながか…」

「……大丈夫かな…」

「ど、どうやろうな…」

「……ラッシー作っておこうかな…」

「…らっしー?」



インド人がやってるカレー屋さんのラッシーがめちゃんこ好きです。
題名の全てを諦めて単語を重ねた結果それっぽくなったことが今回の収穫です。
長門のキャラソン思い出しますね。MGS CQC MGS with CQC。





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