∈でーえむえむそうこ∋

0904 刹ノの宴






「……あ」

「……帰ったぜよ、主」

「おー…おかえり」

「………」

「……?」

「軽っ!軽うないか?!それが修行に出てとった刀剣に対する出迎えの態度かえ?!」

「いや…ごめん、なんか…夜縁側歩いてたらそこで会うとは思わなくて」

「はー…装いも新たに気張って帰ってきたらこれぜよ…」

「……吉行」

「…おん、なんじゃ千…お、おんしゃあ、裸足で…」

「おかえり」

「――……お、まん…なんぜよ、急に抱き付いてきおって…」

「…あー…吉行だ…何か海の匂いする…」

「い、犬かおんしゃあ!」

「……流石に4日間は寂しいなあ…」

「!……年単位で帰ってこんかった奴がよく言えたな…」

「返す言葉も御座いません」

「……」

「……あ。お茶飲む?疲れただろ。…丁度今熱いお茶煎れたとこ」

「…もうちいとこう…この雰囲気を大事にせんかえ…?」

「雰囲気?」

「はあ…まあえい…おまんには難しすぎたな…」

「……肩でも揉みましょうか?」

「まっこと気遣いへったくそじゃなあ!」

「はいはい。…よいしょっと。…ん?」

「…っあるじぃ…!」

「うおお…っと。太鼓鐘?」

「どこ行ってたんだよぉ…」

「あれ…お前光忠の所に戻さなかったっけ?」

「主の部屋に戻った!そしたら主がいなかったから…」

「意地でも俺と寝る気か…」

「主と寝る!決めたんだ!」

「…太鼓鐘貞宗か…げにまっこと好かれちゅうな…」

「…んお…吉行か…おかえり…」

「おう、戻ったぜよ」

「……」

「なんじゃ?何ぞ言いたいことでもあるんかえ?」

「…俺はお前に負けな…うおわっ主!抱き上げるな!」

「はいはい大人しくして。…みんな寝てんだから大きい声出すな」

「ぐ…っ子供扱いすーるーなー!形は小さくても俺主より年上だぞ!付喪神だぞ!」

「だから静かに。そろそろ本気で怒るぞ」

「主ー!」

「太鼓鐘、いい加減にしろ。寝床に駄々捏ねて言われた通りに眠りもせず、果てに修行帰りの吉行に喧嘩売って大声出して。これのどこが子供じゃないんだ」

「……っ」

「俺は子供は嫌いだ。聞き分けのない意思の疎通のできない生き物は苦手だ。…分かるな」

「…ご…申し訳、ありません…」

「うん」

「……千…」

「…なんで吉行もしゅんとするんだよ…」

「おまんがキレると地味に怖い…」

「そう?貫禄ないって滅茶苦茶言われるんだけど」

「…なんかこう、完全に見捨てられたっちゅう恐怖があるせよ…」

「……まあ、人に対する期待値は低い方だと思うけど」

「っ!」

「…別に太鼓鐘に期待してないとは言ってないから、そんなにビビらないでよ」

「…でも俺今主怒らせた…」

「一度や二度怒らせた程度で失望しないって」

「…ごめんなさい…」

「大丈夫だって。怒られるうちが花」

「怒られなくなったら…」

「その前に俺がここの本丸から消えるかなー」

「そんなの嫌だ…」

「次また勝手に姿消したらわしが斬り伏せに行くがの!」

「マジすか…」

「…騒がしいと思ったら…おかえり、吉行」

「ふああ…貞ちゃん、勝手に抜け出しちゃ駄目でしょー」

「薬研!光忠!戻ったぜよ!」

「おう、また傾いて帰ってきたな」

「格好良くなったね、吉行くん!…ああ主、貞ちゃん預かるよ」

「ん。お願いします」

「はーい。…貞ちゃん、どうしたの?主に怒られた?」

「…主に、嫌われそうになった…」

「おや」

「何か凄くショック受けちゃったから慰めてあげて」

「いやいやそれは主の仕事でしょ…まあ今夜は預かるけど」

「…とりあえず、一息つこうって話になってるから。…台所でも行こうか」

「おう!」

「…じゃあま、俺達は寝床に帰るかな」

「え?薬研来ないの?」

「だって四日ぶりの近侍と主の邪魔はできないよ。お二人で、ごゆっくり!」

「…よく分からない気遣ってきたな…」

「……よく分からんか?」

「よく分からん」

「…はー…そうかえ…」

「……ん、そうだ。腹減ってる?俺お茶漬け食べようかと思ってて」

「夜食かーええのう」

「なんかね、石切丸が突然糠漬けにはまってキュウリの漬け物作ってくれたんだよ。それがまだあるはずだから一緒に食べよう」

「お!キュウリの漬け物!へっへっへ…最高の組み合わせじゃな!」

「なー」

「あ、わし鮭茶漬けで」

「えっ。…鮭ってあと一つしかなかったんじゃ…吉行野沢菜にしろよ」

「嫌じゃ。わしは鮭」

「俺も鮭が良い」

「知らん。わしが鮭」

「主に譲れよ」

「修行帰りの近侍に譲ろうっちゅう気遣いはないがか?」

「鮭茶漬けとかいつでも食べられるじゃないですか…」

「そっくりそのままその言葉返すぜよ」

「……分かった、じゃんけんだ」

「おーし、負けんぞ」

「恨みっこなしだからな」

「おん、当然じゃ」

「…とりあえず鮭茶漬けの素があるかどうか見てから……」

「…どういた、千?」

「………吉行…」

「ん?」

「……梅しかない…」

「………」

「………」

「…レトルトカレーにしよう」

「賛成じゃ」

「くっそー俺めっちゃお茶漬けの気分だったのに…一番高いレトルト食ってやる」

「千、わしこれ!この何とかホテル監修カレーじゃ!」

「おし、んじゃ俺はこの横須賀海軍カレーにしてやろう。死ぬほど食ったけどもっと食ってやる」

「…お!冷凍のハンバーグあるぜよ!」

「全部食え!略奪だ!」

「略奪じゃー!」

「今夜は宴だッ!」



そして朝光忠と歌仙にガチギレされる。
むっちゃん極になりました。





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