∈でーえむえむそうこ∋ 0824 剪キ期遠征に候2 「…失礼、ここは虎落笛本丸で相違ないか?」 「そう、だが…」 「そうか。…無事到着できたか…」 「お前…その背に、おぶってるのは…」 「俺の主だ。……お前達の主でもあるのだろう?」 「………」 「伽羅ちゃん、どちら様だったー?…あれ?どうしたの?」 「…光忠…」 「……主…?」 「虎落笛千その人だ。…長期任務と言っていたのだったか。それが終了した。…故に、戻って来た」 「君は…」 「俺は巴形薙刀。…任務先でたまたま主の手によって顕現した。…入っても良いか?」 「う、うん。どうぞ……あ!布団!布団敷くからそこに主を!伽羅ちゃん、薬研くんと長谷部くんと吉行くんと…ッああもうみんなに!みんなに主が帰還したって伝えて!」 「あ、ああ…」 「……はあ…」 「えっと…巴形薙刀、さん…?」 「巴で良い」 「じゃあ、巴さん。…主を連れ帰ってくれて、ありがとう」 「……それが、俺の役目だからな」 「…うん」 「詳しい話はあとでしよう。…流石に俺も疲れてしまった。主を降ろしたい」 「うん、そうだね」 「失礼する。…どこへ連れて行けば良い?」 「奥に…主の部屋に行こう」 * 「…なんちゅう姿で、戻ってくるがじゃ…このべこのかあ…」 「主…」 「…ぐっすり熟睡中、って感じか。相当疲れてんな、こりゃ」 「今朝方やっと全任務が終了した。鎮守府に戻り簡単な手当を済ませ荷物を抱え、早々に飛び出し今に至る」 「…主は今まで何をさせられていたんだい…?」 「…指揮だ。艦隊の指揮を執らされていた。…戦場のその真っ只中で」 「そんな…!」 「千は艦載機を放てたはずぜよ。…それがなんで、ここまで傷付くがじゃ」 「それはこちらでの話だろう。…セイレーンにこちらの武器は効かない。有効なのはメンタルキューブより生まれし艦船達の攻撃のみだ。故に主は攻撃手段を持たないまま生身で…いや、生身では若干語弊があるが…武装せず敵陣に切り込んで行っていた」 「…見た限り、大きな怪我はなさそうだけど…体中に擦り傷や切り傷や…こんなに傷付いて…」 「全任務が終了ってことは、もうその鎮守府には戻らなくて良いんだよな?」 「ああ。契約終了の確認は何度も行った。ここで呼び戻された場合は契約違反とみなされ上から制裁されるはずだと主は言っていた」 「…何が何だか分からねえが、戻らないのであればそれでいい。…帰ってきたのなら、それで良い」 「……千…」 「………ぅ…ん…?」 「っ千…!」 「っ朝礼!…は、終わった…よな…?あれ…?会議…」 「主、重桜の一航戦は撃退した。レッドアクシズとの衝突も一時休戦となった。…俺達は解放された。…ここはお前の、本丸だ」 「………巴…」 「…POWとフッドより伝言だ。散々に振り回して申し訳なかった。貴殿の助力に心より感謝の意を表す。…貴殿に女王の加護がありますように、とのことだ」 「……ロイヤルネイビーメイド隊…いないんだよな…?」 「ああ」 「…っ巴ぇ…!」 「……抱き付いて貰って全く構わないが、一応言っておくと回りにお前の刀達がいるからな」 「……お…」 「…よう、おかえり大将」 「薬研…」 「…少し男前になったかと思ったら、その泣き虫なのは全く変わってないんだね、主」 「光忠、長谷部…」 「あるじ…!」 「……吉行…」 「…とりあえず、あとで一発殴るき。覚悟しとけよ千」 「…うん」 「それから。…全員に謝れ。仕事放棄にも近しい状況が続いたき、不安がる奴も怒っちゅう奴も居る。釈明はいらん。ただ謝れ」 「分かった」 「……嫌に素直じゃ。熱でもあるんか?」 「文句なく非を認めたらこれだ…」 「…ああ、紛う事なき千じゃ」 「俺ですよ」 「……わしもちょっと、抱き締めさせとおせ」 「うん」 「………」 「何か言わないの?」 「……放浪もええ加減にせい、浮気者」 「…は?」 「そんなとこぜよ!よし、わしは大広間に人集めてくるきに、後は頼んだ」 「うん、宜しくね吉行くん」 「……なんだあいつ…」 「…たーいしょ、吉行気になるのは分かるが次はこいつも慰めてやってくれ」 「う…っふ、ぐう…っ」 「……長谷部…ちょっとその情けない顔面白いな…」 「あるじぃ…っ!」 「あああ…ご、ごめんなさい…」 「ううううう…!」 「…………」 「お、嫉妬か?嫉妬の表情だな、それは?」 「嫉妬?…いや、違う」 「違うのかい?じゃあ、その視線はどう言う意図が?」 「…本来の彼は、こう言う人間なのだなと思っている」 「……そんなに違ったのか、そっちでは」 「もっと苛烈だった。口も悪かったし、手も出ていた。…追い詰められて、必死だったのだろうな」 「いや、まあ、ここでもあまり変わらない気もするけど…」 「表情が違う。…俺は彼の笑顔をほとんど見たことがない」 「…そっか」 「大将にもそんな面があるんだな」 「……そうだな。俺の知らない主の表情を、お前達が知っているというこの状況は…少し気に食わないかもしれない」 「ん゛っ」 「あー…まあ一年近く主と一緒なら…まあなあ…」 「…なんだ、その反応は」 「…つかぬ事をお聞きしますが、巴さん」 「ああ」 「主のこと、結構好きかい?」 「……質問の意図が分かりかねる」 「ああやって他の奴に大将を独占されてるとムカつくか?」 「…ああ」 「自分もああされたいと思うか?」 「まあ」 「よしんば自分だけにすれば良いとも思うか?」 「そう、だな」 「よし、確定だ」 「ですよねー」 「…お前達は先程から何を言っている?」 「巴、鎮守府ではどうだったか知らねえが、ここでは主を好きな奴はわんさかいるからな。覚悟しとけよ」 「…主はあちらでも人気はあった。別段状況は変わらない。それに、主に頼られている自負もある」 「つ、強い…!」 「変に拗ねそうになくて良いじゃねえか。結構結構」 「…拗ねる…」 「…ふー…ごめん長谷部、一回離すよ」 「…主…はしたなく取り乱しました。申し訳ありません…」 「こちらこそ、不用意な心配をかけた。ごめんね」 「…再び主に会えて、触れられて、長谷部は幸せです…。貴方は俺を、捨てていなかった」 「捨てるわけないでしょ。…俺にお前達を捨てる権利はないよ。…むしろ、俺の方が見限られたと思ってたし」 「そんな!」 「話は出たんだ。…今後もし君が戻ってこなかった場合はどうするか、って話の延長線でね」 「まあ、だよね」 「選択肢の一つとして上がったけど…みんな君に何かしらの情を持っていたみたいでね。最終手段として留めておこうってことで収まったんだ」 「…こんな審神者についていけるかーって、ならなかったの?」 「そりゃ出たさ。…けど、大将の悲しむ顔を想像しただけで、結構きてな」 「…割とすぐ泣いてたから、想像しやすかっただろ」 「うん、それはもう」 「…俺は想像するだけで胸が壊れそうでした。貴方に捨てられることは何度も考えたことがあったけれど、貴方を俺が捨てると思うと…呼吸もままならなかった」 「…長谷部…」 「……主、もう一度だけ、抱き締めても良いですか?」 「うん。…お願いします」 「…大広間に全員集まったぜよ。…って、まあーだ甘えちゅうか長谷部ぇ」 「黙れ…」 「…よし、行こうか。…巴、お前も自己紹介の準備しとけよ」 「自己紹介とは、何をすれば良いんだ?」 「名前と刀種言っとけばいいんじゃない?」 「なるほど」 「……あーこっわ」 「ふふ、プレッシャー感じてるね」 「そりゃあね…」 「…さあさ、気張っていこうや、大将」 「おーう…」 マジで二年ぶりぐらいに真面目にゲームしてます。にゃんせんは手に入れたぞ! ×
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