// 1111



「欲しくて」

シロヤマくんに年齢を聞けば、14だけどと生意気そうに口を尖らせながら言った。
中学生!!

「ぜ、絶対だめです!!ドフラミンゴさんは18禁なので!!」

ゲラゲラ笑われた。ルフィとドフラミンゴさんに。


//


終電が既に行ってしまい、タクシーでルフィのアパートまで帰ってきたドフラミンゴさんは1人の少年とその彼のパソコン1台を連れて帰ってきた。
キッチンのレトロな柄の床に美人なパソコンと一緒に正座させられた利発そうな彼が、伝説のパソコンに魅せられ俺をどうにかしようという計画を企てた当人らしい。銀のハーフリムの眼鏡が大人の印象を際立たせるけれどその奥の顔は歳相応に幼い。

「鰐んとこと俺んとこ!侵入したのもお前だな!?」

腕組みをして怒っていますと誰が見てもわかるように眉間に皺を寄せルフィが台所に仁王立ちする。

「へぇ、あってたんだ」
「今後お前にはジャンク品しか送らないって言ってたぞ!ちゃんと鰐に謝っとけよ!」

どうやら彼は伝説のパソコンを手に入れるために、俺の前に他の人達にも色々していたらしい。あの人怒らすと絶対怖いと思うよ。だって港の倉庫だよ。2時間サスペンスよろしく車ごと湾に沈められる可能性がある。謝るといっても、もしかしたら、ほら、指とか。

「うん、麦わらさんもすいませんでした、被害どれくらいです?」
「ないぞ!平気だ!ありがとな!」

心配に見せかけて隠したナイフも弾き飛ばすルフィの歯を見せる笑顔に、シロヤマ君が何度も瞬きしていた。そこにドフラミンゴさんがガニ股でしゃがみこんで目線を合わせる。

「違法改造に器物破損とPC法違反ついでに不正アクセスだ」

あの剣幕だと幼稚園児は泣き出しそうだ。

「き、器物破損はそっちだって」
「恥ずかしい顔写真付きでデータばら撒かれてェか」
「すいませんでした」
「俺じゃねェ」

ドフラミンゴさんが突然こっちに振るから、諦めきれずに少し恨めしそうな瞳とバッチリ目が合ってしまった。顔が見えないと不信感しかなかったけれど、主犯格がこう目の前で肩幅を小さくしてる子だと、なんだか責める気になれない。
後ろを指す親指に誘導されて、もうしません、とさっきよりボリュームが絞られた声が聞こえる。つい反射的にいいよと言うとドフラミンゴさんが畳み掛ける。

「オイこらxxx、よくねェ」

「俺なら全機鉄屑回収に出しちまうとこなんだが、この通り俺のご主人様は過ぎる程お人好しなんだ、クソガキ、その"保護者"に向かって復唱しろ」


「"再び危険な目に遭わせた場合は全機内全データの発信者情報付き及びアクセスキーなしアップロードを許可します"」
「畏まりました、シロヤマ様」

一緒に来た美人さんがにっこりと笑いかけたのに、シロヤマ君は渋い顔だ。



//


まぁ今日は泊まってけよジョー!の、まぁってなんだよ。ネット外でハンドル呼ばれんのそわそわするからやめろ!でもさっきの深夜料金のタクシー代で財布がほとんど空っぽだ。
なんやかや玄関で押し問答してたけど奪いそこねたDDシリーズとお兄さんも泊まっていくらしい。

「で?で?で?」

自分はプレミアムモルツを開けて、麦わらが僕のコップにサイダーを継ぎ足してくる。

「は?」
「あるんだろ?ミンゴの戦闘シーン!!」

本物の麦わらの中身はなんとただの大学生。掲示板ではかなり有名なパソコンマニア。そのメインマシンのエースに会えたのは正直感激した。
なんたって改造を重ねて組まれたのにこのスタイリッシュさを維持してるマニア垂涎のハイスペックパソコン。しかもそのエースの横に起動した都市伝説までが座ってる。僕は6台イカれた甲斐があったと言ってもいいかもしれないくらいの常識はずれを体験したし、今更酔っ払いに絡まれるくらいじゃ±で表せば今日の+は揺るがない。

「ああ動画?あるけど百万桁の暗証つけられたから無理」
「ひゃくまん!?」
「フフフ、ちゃんと勉強すりゃ突破出来るっつったろ」
「えええ!なぁぁミンゴ頼むよぉ見たいな〜見たいな〜」

麦わらが頼むと、賞味期限ギリギリアウトの梅酒と杏露酒を交互にロックで飲んでるxxxさんのグラスに氷を摘んで追加してるDDシリーズが少し笑って、数字を唱え出した。

「31415926535897932384626」

「うわぁエース暗記!!」
「おう!ん?コレって」

この場のどの人間よりも早く、エースが直ぐに何か判別したらしい。
314から始まる久遠なる桁の数字。円周率かよ。簡単すぎる。くっそ。

俺のパソコンが蹴り飛ばされる僅か数十秒間の映像に麦わらが大興奮して声をあげていた。僕よりずっと子供みたいだ。xxxさんはもう少し眠そうになっていた。


「バキューム改造ってなに」

据わった目で突然xxxさんがぽつりと呟いた声に麦わらも黙った。
それは一時大流行したパソコン改造。ナニがナニする事故が相次いで今では違法となったけど、僕のメインマシンには実は隠して搭載済みだ。しかもそれをDDシリーズに把握されてることが厄介だ。お兄さんはその単語を何処で聞いたんだろう。

「口ん中をな」
「わーーーー!言うなよ説明すんなよ!お兄さん俺より年上のくせになんで知らないんだよ!」

すったもんだしてる内に聞いた本人はもう興味を失ってて、伝説のパソコンの脚の間で胸板に頭を預けて丁度良い位置をもぞもぞと探して、本格的に寝息を立て始めた。お兄さんちょっとしか飲んでない筈なのに。

「ししし、xxxはパソコン関連はなんも知識ねぇぞ」
「なんだよそれ、伝説のパソコンが勿体無い」

膝頭を掴んだ自身のそれより幾分小さな主人の手を持ち上げたり落としたりして弄り、満足そうに笑った。


「xxxは何も知らねェからイイんだよ」




/ 1111 /


↓OS DD (version 23.0x3ff.2)

↓dfmf



- ナノ -