もしもシリーズ | ナノ



こちら不良取締不良グループ

「おい雪男もうそろそろだぞ〜」


霧隠シュラの声にうつらうつらと連日の疲れから眠りかけていた雪男は意識を覚醒した。

未だ年齢をサバよんで学生だと偽るシュラは雪男にそこらにあった紙くずを投げつける。


「雪男、ちょっとこい。」


投げられた紙くずに心の中で文句を言いながらも、雪男は重たい腰を上げ、ごそごそと何かを探しているシュラの元へと向かった。


「ほい。」


シュラは何かを探しながら雪男にそれを投げてよこした。

雪男はその何かが分からないまま受け取る。ずしりと少し重い気がした。

黒光りのするそれは警棒であった。持ち手の部分にはストラップがついており、先が伸びる。


「危なくなったら使えよ。」


まだ何かを探しているようでこちらをちらりとも見ずシュラは言う。


「こんなものいったい・・・・」


そうシュラに聞こうとして雪男はそこで口をつぐんだ。

愚問であったからだ。

シュラは雪男の養父である藤本獅朗と仲がよく、たまに一緒に悪さをしたりする。

おそらくシュラは獅朗からこの警棒をもらったのだろう。

獅朗は警察官であるがどうしてか法に触れない限り何をやってもお咎めなしだ。

昔はそんなことをしているとも知らずただ、その正義を貫く背中にあこがれたものである。


「そういえば、今回はどこのグループなんですか。」


警棒を懐にしまいこみながら雪男は聞いた。

シュラは先ほどからごそごそとやっていた手を止め、自分も警棒を持つ。先ほどから探していたのは警棒だったようだ。


「ま〜た、"あの"グループだにゃ。」


ふざけた口調だがシュラは心の中では真剣だしいろいろと考えている。


「また、"あの"グループですか・・・」


"あの"グループとは最近、雪男たちの手を焼かせているある不良グループだ。

卑怯で汚い手を使うことで有名で、関東でスリーだったか、フォーだったかの強さを持っている。

この間、雪男の双子の兄の奥村燐のグループが奇襲にあい、返り討ちにしたという情報をメフィストからもらった。


雪男は不良を取り締まる不良になろうという思いからこのグループを立ち上げた。

この雪男の属しているグループは雪男の矛盾した心から生まれたものだった。

不良になりたい。けれども正しい道を自分は歩まなければならない。

そんな二つの思いと雪男は向き合い考えた末思いついたのだ。

不良でありながら不良たちを――――この世の悪を取り締まる。


雪男は、養父である獅朗や昔からの知り合いであるシュラ、獅朗の知り合いというメフィストの協力をえて今こうして活動をしている。


雪男とシュラが実際に取り締まりをするが、二人だと大変なときは主にシュラが応援をよんでくれる。

今日もその応援がくるそうで、後五分でつくという話であったがその相手を雪男は知らない。


と、そこに、応援らしきグループがやってきた。

そのとき雪男は眼鏡を拭いており相手の姿はきちんと見ることができなかったがその声で誰だか分かった。


「おーっす!」


聞きなれすぎている声はまさしく雪男の兄、燐のものである。

雪男は驚き急いで眼鏡をかけると声のしたほうを見た。

先ほど声を発した兄をまじまじと見つめる。・・・どこからどう見ても燐だ。燐である。


「兄さん・・・・!?」


「よぉ!雪男!」


満面の笑みの燐に対し、雪男は目を丸くしていた。予想外の応援に脳内がパニックを起こしている。


「応援来るっていっただろ〜?」


にしし、とシュラはいやらしい笑みを浮かべて雪男を見ていた。


「(道理で、教えてくれなかったわけだ。)」


雪男はもう、あきれるしかない。シュラの悪巧みにいちいち付き合ってられない。

一つ、ため息をつき心の中にあるいろいろなものを全て吐き出した。


「ゆ、ゆきちゃん久しぶり!」


「しえみさん、お久しぶりです。神木さんとナマエさんも。」


しえみが少し赤い顔で雪男に深々と頭を下げた。

はじめはあんまり深くお辞儀をするものだから驚いていた雪男だがこれがしえみなので最近はなれてきた。


「よっ、あーにきっ!」


おどけて背中を叩いたのは燐のグループのナンバーツーの実力を誇るなまえである。

彼女は雪男を"兄貴"と呼ぶ。以前、なまえの危ないところを雪男とシュラで助けたことがあったのだが、それ以来雪男のことを"兄貴"、シュラのことを"姉貴"と尊敬の念をこめて呼んでいた。

兄貴と呼ぶのはなまえだけなので少し照れくさいが悪い気はしないのは確かである。


「どうもこんばんは。」


なまえに続き今度は出雲が挨拶した。

雪男もどうもと挨拶を返した。


一通り挨拶を済ませたところで一応今回取り締まる不良の情報確認を行った。

燐たちは一度相手とけんかしたことがあるので実際にケンカした経験などの情報交換などもし、準備は万全だった。

情報確認が終わり雪男は一番に立ち上がった。


「じゃあこれから、問題の不良グループを取り締まりにいきます。」


雪男は気合の入った堅苦しい挨拶とともに、一歩を踏み出した。







(あ、あれっ?こっちじゃねぇの?)


(こっちだよ、兄さん。・・・・本当に大丈夫なの。)


(あ、当たり前だオラ!みてろよ俺の強さ!)


(なんだか心配になってきた・・・)





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