きっと最後は手を伸ばす | ナノ
きっと最後は手を伸ばす
レウとクロウリーのツーショットは珍しくもない光景である。


「とかしたAKUMAの血なんて飲めるのであるか?」


「知らない」


二人のイノセンスには共通点があり、どちらも牙を使うということである。相違点は、レウは蛇のように毒を与えるがクロウリーは血を吸うということ。この相違点と共通点によって二人は同じ任務に就くことが度々ある。そしてレウはクロウリーのどこが気に入ったのかは知らないがケイのように話をするようになった。彼らはよく、食堂の一角を陣取って大量の食事をとる間に話をしている。


「今度試そう」


「い、いやそれは……」


「いや?」


「そ、そういうわけでは、」


「じゃあしよう」


ただしイノセンスを発動していない状態のクロウリーは気弱なので空気を読むことをまだ知らないレウに押されることがよくあるが。いつもならここでケイが助けに入るところなのだが、今日はそのケイの姿が見えない。ここは神田がレウの教育係になるところかと思われた。しかしその前に別の影が現れる。


「だめさぁ、レウ」


兎だ。捕食者であるライオンに自ら近づいていった馬鹿な兎だ。今まであまりレウとラビが一緒にいるところを見たことがないので、馴れ馴れしく接しに行くラビに少なからず神田は驚いた。ラビはレウの隣の席へと座る。するとレウはラビに警戒心を表す様に身を片側に寄せ、ラビを睨んだ。神田はさらに驚いた。レウの睨みは、威嚇というよりも虚勢に見えたからだ。レウは意外にも兎が天敵らしい。


「クロウリ―、困ってるさ」


「…………」


「だからクロウリ―にAKUMAのドロドロ飲ませるのはなし、な?」


「…………」


ラビはケイの代わりの役割をきっちりとこなした。レウはラビの言っていることがわかった様子だが頷かず、鼻を鳴らしてラビからそっぽを向いた。ラビはその反応を予想していたようで、ただ笑っている。


「なあ、そろそろ俺とも仲良くしねぇ?」


ラビが仕掛けた。レウの眉が少し吊り上がったのが見える。


「クロウリー、飛ぶ小さいの、なんていう?」


「ハエのことであるか?」


「あっちいけ、ハエ」


「えー、冷たいさレウ」


完全に嫌われているということを気づいていないのか、ハエだと罵られてもラビにへこんだ様子がない。もしも気づいていたとしたら強い精神だ。そうでなければエクソシストやブックマンなどできないだろうが。


「あっちいかないと、前みたいにひっかく」


「ひどいさ」


しくしくと泣き真似をするラビのことなどレウはお構いなしだった。クロウリーはそんな二人をおろおろと見守っている。


「私は、アカが嫌い」


「レウ、それは言い過ぎである」


「でも、嫌いだから」


クロウリーの咎める言葉をものともせず(それほど力強いものでもないが)二度目の嫌いをレウが発する。ラビはそれでも泣き真似だけでへこたれた様子はない。


「じゃあ、どうすればいいんさ〜」


嘘っぽく嘆くラビに、レウは生真面目に答えを考え出した。それから導き出した答えは、神田とクロウリーへの指差しであった。


「つよい」


レウは今度はラビを指差した。


「よわい」


神田は、思わず笑い出しそうになった。レウの評価基準が見た目の強さだと気がついたからだ。確かにラビは、外面はへなへなと弱そうに見える。レウはラビとは一度も任務をこなしたことがなかったはずだし、レウがラビを弱いと思うのも無理はないだろう。
神田は数瞬だけケイがなぜレウに好かれているか疑問に思った。見た目だけならケイは弱そうだ。しかしすぐに二つの理由を思いつく。
ケイがレウに好かれているのは、おそらくまだ子供だということと、ケイとよく任務をするがゆえにケイの強さを知っているからだろう。

評価基準が見た目だと知らないラビとクロウリーは、ただただ困惑してレウを見つめていた。一方でレウは言い切ったという顔をして、クロウリーを引っ張って、ラビから離れた別の場所へ行こうとしていた。

神田は、少しにやける顔を押さえられなかった。


弱肉強食の価値観


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