▽ 訓練3
その後も精度をあげるために娟と神田は延々と同じことを繰り返した。
一度の成功が自信に繋がったのか、娟は順調に上達していき、神田も合格を出した。
「防御ができてりゃ、身は守れる。しばらくはリナと組手やっとけ。できてきたら、今度はイノセンスで相手してやる」
訓練が終わって、娟も神田も汗をかいていた。神田は汗を拭っている。
「神田さん、あの、ありがとうございました」
娟は深々と頭を下げてお礼を言った。
「別に」
神田の返事はぶっきらぼうだったが、そういう神田の気遣いがないところに、娟の成功が本物であることを感じさせる気がしていっそう嬉しかった。
顔をあげると、神田がじっと娟を見つめていた。
「どうしましたか?」
「…………」
神田の沈黙に娟が少し首をかしげたとき、神田の腕が延びてきた。手のひらが、娟の頭の上に乗る。ぽんぽん、と二回頭をなで、戻っていく。
「じゃあな」
神田は他はなにも言わずその場を立ち去った。
娟は撫でられた頭に手を重ねて、不思議な感覚を余韻として味わうことになった。
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