cold body/hot heart | ナノ

▽ 危篤3


イノセンスの発動状態が続いたことによって脱水症状を引き起こしていた娟は、へブラスカの施しによって危機は脱したわけだったが、今度は小規模ながら問題を抱えることになった。
それは、目を覚ますまで病室でみてもらうことになった娟には、婦長をはじめとした医療班の非イノセンス保持者による医療行為を受けられないということだった。イノセンスの発動がとかれたが、娟に近づくとイノセンス保持者でないものは異状をきたした。そのため娟を看るのはイノセンス保持者であるエクソシストの役目となったのだったが、そこにまた問題が生じた。ここはアルトか同じ性別のリナリーが担当するべきだろうという見解にいたったわけだったが、どうしてかアルトはイノセンスについて、科学班から引っ張りだこでリナリーは任務中という最悪の偶然が起きてしまったのだ。ほかの残っているエクソシストからは医療行為など断固拒否と断られ、結局最後には神田にその役割が押し付けられることになった。
こんなこと、普段の神田ならば抜刀してでも拒否しただろう。しかし神田がそれを多少渋りながらも受け入れたのには理由があった。
ひとつは、娟の看病も任務の延長線上にあったということ。そしてもうひとつは娟の身にまとう、周りを惹きつける何かが気がかりだったことだ。
あれがほかの人間にも通用するとすれば。と神田はなんとはなしに想像してみる。
きっと娟は多くの人間を無意識のうちに惹き付けてしまうのだろう。しかしそれだけでは終わらないはずだ。あの惹きつける力は強すぎる。体験した神田だからこそ分かることだ。あの惹きつける力は麻薬のように人を過激にさせる。それほど強い力をほかの人間の前に何の解決策もなくさらけ出すことがどうなることかなど想像するのはたやすいことだ。

神田は看護婦に言いつけられたとおり看病をし、それが終わるとベッド脇の椅子に座った。

(てめぇ、いつ起きんだよ・・・)

神田は苛立たしげに一度舌打ちをする。
するとそれに呼応するかのようにぱちりと目が開いた。
神田はぎょっと目を見開く。そんな神田をよそに娟はむくりと起き上がった。きょろきょろとあたりを見回す。ぱちりと視線が合う。

娟は東洋人らしい目をぱちくりと瞬かせ、ん?とでも言うように首をかしげた。

「・・・ちょっと待ってろ。」

神田はとりあえず手近にあった書くものを娟に渡した。娟は受け取ると軽くぺこりと頭を下げて、たくさん文字を書き付けていく。

『ここはどこですか?』

「黒の教団の医務室だ。」

『アルトは?』

「科学班のやつらから・・・この黒の教団のやつらだが、そいつらから引っ張りだこになってる。」

『すいません、お水ください。』

「そこにある。」

『アルトに今から会えないんでしょうか。』

「さあな。・・・今からお前が起きたこと報告するから、待っとけ。」

いくつか適当に質問に答えてやってから、俺はコムイに娟が起きたことを報告した。

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