久しぶりに二人がかりで一日京都を遊び倒した。 謙也お気に入りの古着屋のはしごだとか、以前二人で見つけて以来、白石の行きつけになっているナチュラルフードのレストランで季節の野菜たちを堪能してみたり。
それぞれにとってはささいなことの連なりだったけれど、ほんとうに久々の終日オフの、しかも連休というのも手伝って、白石でさえ普段よりだいぶ饒舌になっているのを自覚しながら、それをとめられずにいた。
なんや今日はえらい楽しそうやったな。 謙也が、からかう風でもなく口にした帰りの電車。
自覚していても、幼さを指摘されたようでばつが悪い。 謙也と話すのは楽しくて、教室でもコートでもない場所で同じ時間を共有することが嬉しかった。
けれど、それが自分だけなのだと知るのは、なんだか ほんの少し、寂しいことだと思った。
「謙也もようけ笑ってましたー。 それはもう、へらへらと」
「んん、人の顔を締まりないみたいにいうなや。 しゃーないやろ、楽しかったんやから」
「…………」
思わず返答に窮した白石に、なにを思ったのか謙也は驚くくらいやわらかく笑った。
普段は猫のような目尻がほどけるようにゆるむ。
「しらいし 楽しそうやったからおれも楽しかった。 ありがとな」
謙也のこういうところが憎たらしくて頭痛がするほど大好きだ。 嬉しいと思わされる言葉を予期しないタイミングで投下する。 本能で。
敵う気がしない。 悔しいと思いながら、それでも 「また行こうな」 と誘われると、まるでそれしかできない人形のように頷くしかなかった。
今 日 は た く さ ん 笑 っ た ね
100820 (初出 0900909)