BIOHAZARD〜OUTBREAK〜
零下〜blow freezing point〜

「線路を歩くなんてガキの頃以来だが、この光景もいい加減見飽きたな」

果てしなく続く線路を永遠と歩きながらケビンはぼやいた。

途切れた線路で電車を降りてからどれくらい時間が経ったのかわからないが、変わり映えのしない景色の中を永遠と歩き続けるのは、なかなかの苦痛であると初めて知った。

右を向いても左を向いても質素で冷たい壁が並ぶばかり。

これが地上であるなら新鮮な空気を吸えるだけまだマシと言うものだが、残念ながらここは地下。

闇に包まれたトンネルの中はこうも息苦しいものなのか。

「…私達、ちゃんと進んでるのかしら」

ぽつぽつと灯る非常灯の中にぼんやりと浮かぶ線路を見つめながらシンディは不安げに呟く。

同じように心許ない明かりの下を歩いているジョージは、息を切らしながら前方の暗闇に目を凝らしている。

その少し後ろを歩くデビットは、相変わらずの無口でただ黙々と足を進めている。

「はあ〜…腹減ったな…こんな事ならロッカールームに置いてあったビスケット全部持って来ればよかった。ゾンビはビスケットなんか全然興味なしって感じだし。あのまま置いといたってその内カビるだけだしさぁ…」

ため息をつきながらぼやくジムに目をやりながら、シンディは乱れた呼吸を整えるように深いため息をついた。

確かにそろそろ体力的にも精神的にも限界が近い。

一向に出口の見えない地下トンネルを永遠と歩き続けるのは、体力は勿論、精神力も削られる。

時折休憩を挟みながらここまで歩いて来たが、現在地もわからず、どのくらいの距離進んだのかさえわからない。

地下鉄の駅では異変の影響で巨大化したノミに襲われた為、何の準備もできずに電車に乗り込んでしまった為、水も食料も得られなかった。

こんな状況では食欲などなかなか湧くものではないが、栄養不足になれば判断力も鈍るし力も入らない。

どうしたものか…ともう一度ため息をついた時だった。

「おい、みんな見ろよ!明かりが見えるぜ!!」

先頭を歩いていたケビンがライトで前方を照らすと、暗闇の中にかすかに白っぽい光が見えた。

「駅に着いたのか?」

「よかった…」

「やっと出られるよ〜」

期待と不安を胸に進んで行くと、そこはターミナルのようだったが些か質素で物々しかった。

「どこだ?ここ」

「さあ…いずれにしろ他に道はない」

「暗いトンネルとおさらばできるならどこだっていいさ!」

「そうね。もしかしたら他に誰かいるかもしれないし」

「…油断するなよ」

開いたシャッターを潜り灰色の壁が続く通路の角を曲がろうとしたときだった。

突然シンディの足元に銃弾が撃ち込まれた。

「きゃあっ!!」

「何だ!?」

「いいい、今のって銃声!?」

驚愕の表情を浮かべ困惑する一行の前に、銃を構えた研究員らしき女性が姿を現す。

女性の左手には何やら頑丈に閉じられたケースが握られている。

「アンタ達…一般人ね…?」

「…あなたは?」

女性はシンディ達を一瞥すると銃を突きつけたまま別の通路の方へ足を向けた。

「せいぜい頑張ってね」

嘲笑うような笑みを残して女性はシャッターの向こうへと消えてしまった。

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