駐車場で見つけたピーターの車とワゴン車で大学を後にしたシンディ達は、窓の外から差し込む淡い光に僅かな希望と不安を抱いていた。 「もうすぐ夜が明ける…」 シンディの呟きに、後部座席に座っていたデビット達も外に目をやる。 「長い一日だったわ…」 疲れた表情でリタが呟くと、隣に座っていたデビットが視線を前に戻して言った。 「まだ終わってはいない」 「……そうね」 シンディも視線を前に戻し、膝の上で強く手を握り締める。 馴染みのBARから始まったこの悪夢も、きっともうすぐ終わりを迎える。 それが自分達にとって希望となるのか、それとも絶望となるのか、それはまだわからない。 悪夢の先にあるものが、必ずしも良い結果であるとは限らないのだから。 ただわかっている事は、この悪夢の先にどんな結末が待っていたとしても、進むしかないという事だけだ。 たくさんの犠牲を払いながら、それでも"生きろ"と背中を押してくれた人達がいる。 大きな運命の流れに巻き込まれながら、それでもこうして出会えた大切な仲間がいる。 「……大丈夫。希望の朝は必ず来るわ」 誓うように、シンディは真っ直ぐ前を向いた。 それからしばらくして、二台の車はある裏路地で停車した。 「ここもダメか…」 「ここから先は歩いて行くしかなさそうね」 道が横転したトラックに塞がれ仕方なく車を降りると、同じように停車したワゴン車からジョージ達も降りて来た。 「どこもかしこも塞がれていて通れないじゃない!」 「文句を言っても仕方ない。とにかくまた彼等が集まって来る前に移動しよう」 「つっても、この先は通れねぇしな」 「うーん…あ!あのビルの中は?」 ジムが指差す先にあったのは、明かりの点いた高層ビルだった。 「大学からあちこち回ったから今どこにいるのか全然わかんないんだけど、ここってどう見ても裏路地だし。ビルの中を突っ切って表通りに戻れば、場所がわかるんじゃないかなァ…」 ジムの意見に反対する者もなく、一向は誘われるようにビルの中へと入って行った。 「思ったより広いな…。ここは何の会社だ?」 「オフィスビルのようだが…」 「ちょっと待って。受付に案内が…」 置いてあった書類を目にしたリタは、一気に青冷めた。 「どうしたの?リタ」 シンディが声を掛けた次の瞬間、突然ホール内にブザーが鳴り響きシャッターが下りた。 続いて明かりが消え、辺りは暗闇に包まれる。 「おい!何だよこれ!」 「うわわわ!な、何が起きたんだァ!?」 「どうなってるの!何も見えないわ!!」 「待て!みんな落ち着くんだ!」 「そのままじっとして!暗闇で動くのは危険よ!」 突然の出来事にパニックに陥るものの、ジョージとリタの言葉にアリッサ達も冷静さを取り戻す。 「おい、みんな無事か!」 ケビンとデビットが持っていたライターで全員の顔を見回す。 「とりあえず全員無事だな」 「それにしても、どうして突然シャッターが下りたのかしら…」 「勝手に入ったからセキュリティシステムが作動したとか?」 リタの呟きにアリッサが答えるが、すぐにベンがそれを否定した。 「それなら入ってすぐブザーが鳴っていたはずだ」 「しかし困ったな…。これでは外にも出られない」 「……進むしかないだろ」 デビットの言葉に、シンディ達はそっと奥のドアを見つめた。 残された選択肢は、一つしかない。 「……行くぞ」 no 次へ |