BIOHAZARD〜OUTBREAK〜
死守-desperate times-

命からがら廃病院から脱出する事に成功したシンディ達は、ゾンビに追われながら裏路地を走っていた。

アークレイ山中に隣町へ続く道があると老人アルは言っていたが、結局その道を発見する事はできず一向はまた悪夢の街に舞い戻ったのだった。

そしてゾンビに追われて逃げ込んだ先は、このラクーンシティで最も安全な場所だと思われていた場所…R.P.D.(Raccoon Police Department)だった。

「よかった…なんとか辿り着いたわ…」

「みんな大丈夫か?怪我は?」

「オ、オレは平気さ。…たぶん、でも…少し……つ疲れた……」

「もうこの街も終わりだな。どこに行っても死がついて回る…」

「でも警察署なら他より安全なはずよね?」

ホール内に駆け込んだ一向は、不足した酸素を体内に取り込みながら辺りを見回した。

すると奥でパソコンを操作していた婦人警官と男性がこちらに気づいて声を上げた。

「ケビン!お前、無事だったのか!!」

「ん?マービンとリタか!」

「どこに行ってたのよケビン!こんな大事な時に…!」

お互いの無事を喜ぶケビン達だったが、マービンから聞いた警察署の状況は最悪だった。

「ガスやら暴徒やらで、セキュリティ機能と通信手段がイカれちまった。状況は最悪と言っていい。とにかく一刻を争う状態だ」

「おいおい、そりゃ本当か?それに、さっき言ってた抜け道ってのは…」

「それがわかれば苦労はしないだろ!」

「んで、どうすりゃいいんだ?」

「手短に言う、脱出口を探せ!」

「簡単に言うなよな…全く…」

「俺とリタはなんとか外に連絡をつける手段を探す。お前は署内の仲間と協力して入り口を探してくれ。頼んだぞ!」

マービンから頼まれたケビンは軽く肩をすくめると、パソコンを操作するリタに声を掛けた。

「とんでもねぇ事に巻き込まれたな」

「そうね…私にも何がなんだか…」

「…それに、ここもすっかり淋しくなったな」

「ええ…でも、希望を捨てる訳にはいかないわ」

「そうだな。死なねぇためにも脱出しねぇとな」

「無理はしないでよ、ケビン」

「なんか情報はねぇのか?」

「見つけた地図にはプレートが必要って…」

「プレート…?何だそりゃ」

「わからない…でも、立派な手掛かりよ」

「十分だ、いい情報をありがとな…」

リタから情報を得たケビンはホールの入り口にいたシンディ達に状況を説明した。

「わかったわ。そのトンネルに通じる入り口を見つければいいのね」

「ああ。人手が足りねえんだ。頼んだぜ、みんな」

シンディ達は頷いてこれからの行動について相談した。

「ふむ…しかしこれだけ広いとなると、見取り図が欲しいな」

「あー…それなら受付に置いてあるんじゃねぇか?」

ケビンの案内でホール西にある受付に入ると、カウンターの前に一人の警官が立っていた。

「トニー!無事か!」

「おおっ、ケビンか!」

「てっきり死んじまったかと…」

「お前もな…連絡くらいしろ!」

「さて…どんな感じだ…?」

「深刻だな…今回ばかりは…」

重そうにため息をついてからトニーは事情を察して人数分の見取り図をシンディ達に渡した。

「守るべき市民に助けられるとは…自分がふがいない。だが、生き延びる為には君達の協力が必要だ」

「わかった。私に出来る事があれば何でも協力しよう」

ジョージに続きシンディ達も警察への協力を承諾し、トニーは感謝の言葉を送った。

「トニー、他に生存者はいねぇのか?」

「アーロンが署内を見回っているはずだ」

「あいつも無事だったのか!」

「それとジェイクが屋上で見張りをしている。二階の美術室にはルイスと避難してきた生存者がいる。マービンから聞いてるだろうがもうここも持ちそうにない」

「だろうな。外はゾンビ共がわんさかいるぜ」

「この警察署ももってあと数時間がいいところだ。俺は犬舎の様子を見て来る。犬たちも連れてってやらんとな」

トニーが去った後、シンディ達は二手に分かれて署内を探索する事にした。

ケビン、シンディ、ジョージの3人は一旦ホールに引き返し、それから東側オフィス方面へと向かった。

「ここにも死者が…」

オフィス内には魂を失って抜け殻のように彷徨う警官の姿があった。

首筋にはゾンビに肉を噛み千切られた痕があり、虚ろな目は宙を彷徨い続けている。

その姿を見たケビンは、武器を構えようとするジョージの手を押さえ、やるせない思いで銃の引き金を引いた。

銃弾は警官の額に命中し、ようやく動きを止めた警官はそのまま眠るように机の横に倒れた。

「ブレッド……ちくしょう、こんな姿になっちまって…」

「…せめてそこのソファーに寝かせよう」

ジョージが提案したがケビンは死者の瞼を閉じただけで、立ち上がって首を振った。

「いや、先を急ごう。こうしてる間にもタイムリミットは迫ってんだ。死んだ奴らの為にも、ここで死ぬ訳にはいかねえだろ」

「…ああ、そうだな」

「行きましょう、ケビン、ジョージ」

3人はすぐに探索に戻り、一階の東側にある宿直室や取調室などを回った後、二階へ行く為に外にある非常階段へ出た。

するとそこに若い一人の警官がいた。

「よう、アーロン!」

「先輩!…相変わらず遅刻ですか」

「中のホコリっぽさはどうもな…」

「化け物達に囲まれているというのに…のん気なものですね」

「そうでもねえさ。それよりどうなんだ?脱出ルートはあったか?」

「まだ見つけられていません。1時間程前にルイス先輩が避難して来た人達の様子を見に行くって二階へ行きましたけど…」

アーロンが言い終わる前に、鉄柵がガタガタと揺れ死者の呻き声が響いた。

柵の外は血走った目でこちらを見つめる死者達で埋め尽くされている。

「手伝うか?協力した方がいいだろ」

「いえ、ここは僕一人で大丈夫です。先輩は脱出ルートを探して下さい」

「生意気言いやがって。…まあいい、じゃあここは任せたぜ!」

「はい!皆さんもお気をつけて」

ケビンは頼もしい後輩の肩を叩くと、シンディとジョージを連れて二階へ上がった。

「ケビン、大丈夫なの?幾ら警察の人とは言え、一人でいるのは危ないんじゃ…」

「心配いらねぇよ。あいつはまだ新米だが腕は良い。早いとこ脱出ルートを探さねぇとアーロンの努力も無駄になっちまう」

「…そうね。私達には私達のするべき事があるわ」

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