BIOHAZARD〜OUTBREAK〜
零下〜blow freezing point〜

ハシゴを下りるとそこは様々な機械が並んだ実験室だった。

研究員らしきゾンビが一人と倒れたままピクリとも動かない男が一人いる。

ゾンビを避けながら南通路に出て道なりに進むと、曲がり角でバッタリとジョージに出くわした。

ジョージもまたダクトでケビン達とはぐれ、一人でこのフロアを探索していたらしい。

「それにしても、ここって何の施設なのかしら…」

通路を歩きながらシンディが呟くと、同じ疑問を抱いていたのかジョージも頷いた。

「何かの研究施設のようだが、実験室で見つけたファイルには詳しい事は記されていなかった」

「B6Fにあった見取り図にもここがどこなのか書いてなかったわ」

「ああ。ファイルの内容からすると生物に関する研究が行われていたようだが、町の地下にこんな施設があったとは…」

「そうね。でもこんな地下にまでゾンビがいるなんて…」

「…そのことだが、少し気にならないか?」

ジョージの言葉にシンディは首を傾げる。

「そのことって…ゾンビのこと?」

「このフロアにあったPCで施設内のセキュリティを確かめてみたのだが、ここは我々が思っている以上に大規模な施設だったようだ。当然セキュリティも厳しかったはず。にも関わらず異変の影響がこれほど早く地下にまで到達しているとは…」

「どういうこと?」

「確かな証拠や根拠がある訳ではないのだが…もしかしたらこの異変は…」

ジョージが何か言い掛けた時だった。

扉を踏み破って現れたゾンビ達に追われて、シンディ達は非常用通路も兼ねているダクトへ出た。

しかし、ダクトに出たシンディ達を待っていたのは見たこともない巨大な植物だった。

「これ育ちすぎじゃないかァ!!」

「なんて大きさなの…こんな植物見た事ないわ」

「まさか…植物までもが異変の影響を受けていると言うのか…?」

「どっちにしろ、これを何とかしなきゃハシゴは使えないわ」

驚きと混乱でざわめく中、上階からも混乱に満ちた声が聞こえて来た。

「おいおい、こりゃ何だ!」

聞き覚えのある声にシンディは上を見上げたが、丸太以上もある太い触手に遮られて上階にいる人物の姿は見えなかった。

「ケビン!そこにいるの!?」

姿を確認できないまま天井に向かって声を掛けると、向こうもこちらの存在に気づいたのか返事が返って来た。

「今の声はシンディか!下にいるのか!?」

「ええ、そうよ。ジョージとジムも一緒よ」

「ってことは、あとはデビットか」

「一緒じゃないの?」

「途中まで追ってたんだが、ダクトを通ってるときにライトがイカレちまって…。まあアイツなら一人でもどうにかなるだろ。それより問題はこのでけぇ植物だ」

上から降ってくる言葉に、シンディもハシゴに絡まる触手に目をやる。

手持ちのナイフでは小さな傷をつけるのが精一杯で、とてもじゃないが断ち切ることはできない。

下手なことをして刺激を与えたら、襲い掛かって来る可能性もある。

ハンドガンを使ったとしてもこの太い触手に効果があるのかどうか甚だ疑問である。

「どうしたらいいのかしら…」

途方に暮れたようにシンディが呟いたとき、ジョージがあることを思い出して鞄から何かの液体が入った瓶を取り出した。

「そう言えば、薬品の保管庫で薬を見つけたんだが、これともう一つ薬を混ぜ合わせれば植物を枯らすことができるとファイルに書いてあった」

「薬を混ぜ合わせる?」

ジョージが見つけたファイルによれば、そのもう一つの薬はケビンがいるフロアの実験室に保管されているようだ。

それを聞いたケビンは相棒の45オートを手に施設内に引き返し、しばらくして赤い液体の入ったボトルを手にしてダクトへ戻って来た。

「んじゃ今そっちに落とすからちゃんと拾えよー!」

「え!」

ぎょっとして振り向くシンディ達の頭上から薬品が入ったボトルが落っこちてきて、床に落ちる直前にジョージが慌ててそれをキャッチした。

「なんて無茶をするんだ!」

ボトルを手にしたジョージは思わず天井に向かって非難の声を上げるが、ケビンはさして気にした様子もなくカラカラと笑うだけだった。

4/9

前へ 次へ
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -