「ふ〜助かったぁ」 ほっと胸をなで下ろして立ち上がったジムは、部屋の中を見回してから深いため息をついた。 「ここなら安全だと思ったんだけどなあ…結局どこも危ないんじゃないか。はあ…ホント不幸つづきの人生さ」 「もうこの街に安全な場所なんてないのかしら。…とにかくケビン達と合流しましょう。この建物のどこかにいるのは間違いないんだから」 「オーケー。シンディって見かけによらずタフっていうか…度胸あるなぁ」 「そう?でもこんな状況だもの。前向きに考えなきゃ」 にこりと笑ってシンディはもう一度見取り図に目をやった。 「ダクトに出れば他の階に移動できそうね」 「ああ、それなら無理だと思うよ」 不思議に思いながら後ろを振り返ると、ジムが深いため息をついて言った。 「オレ、ダクトの近くに落っこちたんだけど、カギが掛かってて開かなかったんだ」 「そう…。なら別の方法を探すしかないわね」 もう一度見取り図に目をやり、現在地を確認する。 「ここはセキュリティセンターのようね。中央にあるハシゴで下の階に移動できそうだけど…」 ちらりと視線を映せば、部屋の中央にある扉は固く閉じられている。 どうやら横にあるハンドルで扉を開閉させる仕組みになっているようだが、肝心のハンドルが見当たらない。 壁に備え付けられているパネルの中に予備のバルブハンドルがあると記されているが、パネルを開けるにはレンチが必要だ。 しかしさっき見つけたレンチは未だ凍ったまま、これでは使えそうにない。 「ねえジム、どこかにお湯とかないかしら。このままじゃ使えそうにないわ」 「そんなこと言われたって…」 困ったように眉を下げるジムだったが、ふとあることを思い出して顔を上げた。 「そう言えば、ここに来る途中、休憩室があったなぁ…。そこならお湯くらいあるんじゃない?」 「行ってみましょう」 ジムの案内で休憩室を訪れたシンディは、シンクに残っていたお湯でレンチの氷を溶かし再びセキュリティセンターへと戻った。 パネルから予備のハンドルを取り出し、中央の窪みに差し込んでハンドルを回すと扉が開きハシゴが現れた。 下からかすかにゾンビの呻き声のようなものが聞こえる。 「こ、ここを下りるのかい?」 「だって他に道はないし、ここでじっとしてたって仕方ないじゃない」 「それはそうだけどさ」 なかなかハシゴを下りようとしないジムを見て、シンディはふっと笑みを浮かべて言った。 「…怖いならここで待ってる?」 ジムは慌てて首を振り震える手でハシゴを掴んだ。 「こここ怖くなんかないぞ!だから一人にしないで!」 言ってることが矛盾しているジムを見て、シンディは笑いながら先を促した。 前へ 次へ |