「何だアレ?」 「物騒なネエちゃんだな。仲良くやろうって気はないな、あれは」 「結局、何も聞けなかったわね」 「このあたりの情報を持っていそうだったが…」 一方的に言って去って行った女性のことを気にしながら通路の奥へ進んで行くと、荷物を運ぶリフトがあった。 しかしリフトは途中で止まっていてそれ以上先へは進めそうにない。 「どうしよう…」 「引き返すってもな…またあの線路を歩き続けるのはごめんだぜ」 「他に道は……ん?あれはダクトか」 ジョージが脇にあるダクトに気づいて近付いて行った。 「少々狭いが入れそうだ」 「他に道もねぇし、そこから行くしかなさそうだな」 転がっている荷物を足場にしてシンディ達は順番にダクトの中へと入って行った。 職業柄普段からライトを所持しているケビンやデビットと違い、シンディは明かりを持っていない為、ほとんど手探りで狭いダクトの中を進むしかなかった。 やがて前方に明かりが見え、慎重にダクトから出て下に下りると、そこはどこかの施設の通路のようだった。 しかし辺りを見回しても人の気配はなく、ケビン達の姿も見えない。 「どうしよう。はぐれちゃったのかしら…」 一人になると抑え込んでいた不安と恐怖がとたんに込み上げて来る。 「じっとしてても仕方ないわよね」 気合いを入れるようにぎゅっと手を握りしめ、シンディは歩き出した。 通路の角を曲がると、つきあたりの床の上にレンチが転がっていた。 何故こんな所に落ちているのかはわからないが、それ以上に不可解なのはレンチが凍りついていることだ。 まるでずっと冷凍庫にでも入っていたかのようにカチカチに凍りついている。 「これじゃ使えそうにないけど…何かの役に立つかな?」 少し迷ったが、シンディは凍りついたレンチを布巾で包みポケットに入れた。 通路を進みセキュリティセンターと書かれた扉から中に入ると、部屋の中央に扉があり、その正面には何かの制御装置と思われる機械が並んでいた。 機械の一部の画面には警告表示が出ている。 所内ロックを制御しているようだが、このままでは操作できそうにない。 仕方なく機械から離れて部屋の中を見回すと、壁のボードにこの施設の見取り図が貼ってあった。 「ここって何の施設なのかしら…。ずいぶん厳重にロックされてるみたいだけど…」 見取り図を目で追いながら出口を探していると、突然奥にある自動ドアの向こうから悲鳴が聞こえてきた。 直後に自動ドアが開き、一人の男性が転がるように部屋の中に飛び込んできた。 「ヒィイイイ!だだ誰かたすけて!!」 「ジム!」 飛び込んできたのは先程ダクトではぐれた仲間の一人であるジムだったが、何かに追われているのか相当焦っているようでこちらに全く気付いていない。 「お、オレはウマくないぞ…!み、見逃してやるからシッ…シッ!」 「ジム、どうしたの?」 シンディが近寄って声を掛けると、ようやく気付いたのかジムは悲鳴を上げて飛び上がった。 「うわあああ!…って、シンディ!お、脅かさないでくれよ」 「何をそんなに焦ってるの?みんなは?」 「し、知らないよ!それどころじゃないんだってば!ここにも奴らがいて…」 続きの言葉は自動ドアの音にかき消された。 ジムを追って現れたのは、ターミナルで会った研究員らしき女性と同じような格好をしたゾンビだった。 「こんな所にも…!」 怯えて腰を抜かすジムの横に立ったシンディは、持っていたハンドガンの銃口をゾンビに向けた。 「負けないわ!」 強い眼差しでゾンビを睨み付け、躊躇う事なくハンドガンの引き金を引く。 そのまま数発撃ち込み、弾切れの音が聞こえると同時に、ゾンビは倒れてその動きを止めた。 前へ 次へ |