燃え上がる炎と消えゆく街を見つめながら、シンディは生きている事の重みと大切さを噛み締めていた。 大通りで無事ジョージ達と合流し、待っていたヘリや救助隊によってシンディ達はラクーンシティから脱出した。 そこで思わぬ再会を果たしたのが、ホテル・アップルインで別れた消防隊のダニーだった。 亡くなった友の為にも必ず生き延びると誓った彼は、シンディ達と別れた後も救助活動を続け、偶然受信したデビットとリンダの会話を聞いて大通りへ駆けつけてくれたのだ。 そのおかげでシンディ達は全員ヘリに乗り込み街から脱出する事ができた。 …こうして、悪夢は終わった。 たくさんの思い出と消える事のない痛みを残して、ラクーンシティは消滅し、シンディ達の長い一日は昇る朝日と共に終わりを告げた。 …この話は全て本当にあった出来事。 忘れる事など絶対に出来ない鮮烈な記憶。 でも、だからこそ強く生きていける気がする。 時間は前にしか進まないのだから……私はもう悔やまない。 人生は長いようで短いもの。 一度きりしかない大切な時間。 あの悪夢を経験して、当たり前の毎日がどれほど幸せな事なのか身に染みてわかった。 だから私は、これからも前に進んで行く。 ……彼と一緒に。 「じゃあ、またね。……ええ、ありがとう」 電話を切ってシンディは建物の外に出た。 広がる青空の下には、たくさんの人が行き交い話し声と共に通り過ぎて行く。 その中に見知った顔を見つけて、シンディは軽く手を振って駆け寄った。 「ケビン!今日は早いのね」 バイクに背を預けながら待っていたケビンはふっと笑みを浮かべてヘルメットをシンディに投げた。 「そりゃさすがに初日から遅刻する訳にはいかねぇからな。ま、気楽にやるつもりだが」 「もう、またそんな事言って…。でも楽しみね。今日から新しい生活が始まるんですもの」 「そうだな…。ほら、乗れよ」 「ありがとう」 バイクに跨るケビンの後ろに乗って、シンディはふとさっきの電話での会話を思い出してケビンの顔を覗き込んだ。 「そうだわ。さっきリタから電話があったんだけど…もう新しい職場に着いたから、ケビンも遅刻しないようにって」 「相変わらず口煩い奴だな…」 文句を言いながらも口元に笑みを浮かべながらケビンはバイクを発進させる。 太陽の光に映し出された二つの影は、寄り添うように重なり合いながら彼方へと走り去って行った…。 end. →あとがき 前へ 次へ |