BIOHAZARD〜OUTBREAK〜
死守-desperate times-

二階の図書室はルイスから聞いた通り酷い有様だった。

無残に横たわる同僚の遺体にケビンは苦い顔を浮かべたが、ここから脱出する為には避けては通れない。

4人で手分けをして図書室の中を調べ回り、それからS.T.A.R.S.のオフィスへと向かった。

「ここがクリスって人の机ね」

「そのようだが…ずいぶん散らかっているな」

「あいつは不器用な奴だからな」

そう言って笑うケビンだったが、ジョージは呆れたようにため息をついた。

「東側のオフィスで見た君の机も似たような物だったぞ」

「細かい事は苦手なんだよ。それより何か手掛かりとかねぇのか?」

「ねえケビン、クリスってどんな人なの?特殊部隊に所属してるくらいだから、すごい人だって言うのはわかるけど…」

シンディが尋ねると、ケビンは棚に並んだトロフィーに目をやりながら答えた。

「元は空軍に所属してたらしいからな。銃の扱いは勿論、戦闘機やヘリも操縦できるって聞いたぜ」

「それは…すごいわね。ここに置いてあるトロフィーにも彼の名前が刻まれてるわ」

「S.T.A.R.S.が何を調べてたのかは知らねぇが、異変が起こる前から何かあったらしくてバタバタ動いてたみたいだぜ」

「ふむ…彼等はこの異変をいち早く察していたのだろうか…」

「さあな。通信手段がイカレちまって、S.T.A.R.S.にも連絡が取れねぇ。あいつらがそう簡単にやられるとは思えねぇが…」

と、その時だった。

ジルという人物の机を探っていたシンディが、気になる報告書を発見した。

「これは…。みんなこれを見て!」

机の上に広げた報告書に全員が注目する。

「アンブレラに関する報告書のようだが…」

「生物兵器の開発…隊長アルバート・ウェスカーがスパイ?いったいどういうことかしら…」

「おいおい、マジかよ。これは…確かクリスが言ってた話だ。どっかの会社がヤバイもん作ってるとか…。まさか全部本当の事だったのか?」

「なるほどな…。じゃあこの騒ぎは全てアンブレラの仕業って事か…」

報告書を目にしてシンディ達は動揺の色を浮かべる。

だが一人、記者のベンだけは冷静だった。

「これで話が繋がった」

「どういうことだ?」

「…まあこんな状況だしな。隠しても仕方ねぇか」

ベンはため息をつくと、ポケットから手帳を取り出して口を開いた。

「俺がこの街へ来たのは、最近ここらで起きてる"連続変死事件"を調べる為だ」

「変死事件?…そう言えば、新聞で読んだ気がするわ。下水道で変死した女性の遺体が見つかったって…」

「記者の勘と言えばそれまでだが、どうもこの事件の裏にはきな臭い何かがあるような気がして一人で色々と探ってたのさ」

「それでお前もアンブレラに行き着いたって訳か?」

「まだ証拠は掴めていなかったが、例の変死事件が警察と繋がってるって事はわかった」

「!」

シンディ達の間に緊張が走った。

シンディは心配そうにケビンを見上げるが、ケビンは真っ直ぐベンを見つめていた。

「それで一番怪しい警察署長ブライアン・アイアンズの身辺を探ってたんだが、少し派手に動き過ぎたようだ」

「まさかそれが原因で捕まってたのか?」

「よっぽど世間に知られたくない"何か"があるんだろうよ。元々あの男には裏があると踏んでたからな。今更アンブレラと繋がってたとわかっても別に驚きはしないが…」

「どういうことなの?」

「…コネと金を利用して揉み消したようだが、ブライアンは大学時代に二度も婦女暴行の疑いを掛けられ精神鑑定を受けている」

「署長が?それは本当なのか?」

黙ってベンの話を聞いていたジョージもさすがに驚きを隠せなかった。

部下の信望が厚く市民からも多大な信頼を得ている警察署長にそんな過去があったなど、警察関係者であるケビンですら全く知らなかった。

「奴がどっかの会社から賄賂を受け取っている事はわかったが、大元を突き止める事はできなかった。だがこの街で警察組織を掌握してまで成し遂げたい何かがあるとすれば、それは例の製薬会社以外に考えられないだろ。この街はアンブレラで成り立っているようなもんだしな」

「…確かに、医療関係でもアンブレラの力は大きい。だがどうして…」

「その答えがこの報告書にある"生物兵器の開発"なら、全てのつじつまは合う」

「……」

ジョージは信じられないといった様子で黙り込む。

シンディが報告書と一緒に見つけたメモによると、クリスは知人の記者の協力を得て単独でアンブレラを調査していたらしい。

その記者というのは、おそらくアリッサの同僚のカートのことだろう。

クリスと同じS.T.A.R.S.の一員であるバリーは、証拠を掴む為にヨーロッパへ飛び、ジルはアンブレラの研究施設を調査する事にしたようだ。

この異変の原因はアンブレラが開発した生物兵器なのか?

アリッサと出会った地下で迷い込んだ研究施設がアンブレラの研究所だったのか?

あのカエルのような化け物も、ホテルで襲い掛かって来た舌の長い生物も、アンブレラが密かに研究していた生物兵器だったのか?

クリスのメモに記された"クスリ屋"とは、アンブレラのことなのか?

「……」

何気ない日常の中で淡々と進んでいた悪魔の計画に、シンディは震えた。

この街はアンブレラの影響を大きく受けており、アンブレラ無しでは成り立たない程、市民の生活にも貢献している。

そんな大企業が裏でこんな恐ろしい事をしていたとは…。

この異変は、ずっと前から既に始まっていたのだ。

そのことに誰一人気づかないまま生活をしていた。

ただ、それだけのことなのだ。

……なんて、恐ろしい。

「ケビン、この報告書に書かれていた事をデビット達にも知らせて置いた方がいいのでは?」

ジョージの提案にケビンはタバコを灰皿に押し付けながら頷いた。

「そうだな…。よし、俺が伝えに行って来る。マービン達にも伝えねぇとな」

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