「スティーブ、最近あまり元気がないけど…大丈夫?具合が悪いの?」 椅子に座ったまま俯くスティーブに、ジーナが心配そうに声を掛ける。 スティーブはゆっくり顔を上げて笑みを浮かべるが、やはりどこか弱々しかった。 「少し…疲れてるのかもな。別にたいしたことないよ」 「色々大変だったものね。でも、きっともうすぐ楽になれるわ。彼女もそう言ってたじゃない」 そこでまたスティーブは教会のダリアの言葉を思い出す。 「…そうだな」 何の根拠がある訳でもないが、今は何かに縋りついていたい。 ウィラメッテの一件で嫌という程思い知ったのは… 誰かを愛するということは、他の誰かを愛さないこと。 この世は全て等価交換。 この世に生きるすべての生物は、何かを犠牲にして生きている。 死体を喰らって彷徨い歩くゾンビと、何食わぬ顔で肉を喰らって生きる人間。 …そこにどんな違いがある? 「…同じだ。何も…変わらない」 ぽつりと呟いてスティーブは席を立った。 ベッドの横の窓に近付いてカーテンを開ける。 霧に包まれた街の中は、とても静かで…冷たかった。 no Next [Bookmark][Back] |