BIOHAZARD〜DEADRISING〜
Different everyday

デート当日に大統領の娘が誘拐されるという事件が起きて、恋人を置いてヨーロッパへ飛んだレオン・S・ケネディは、空港のベンチに座って深いため息をついた。


仕事柄なかなかハードな毎日を送っているが、今度の事件はその中でもかなり上位に入るであろう難事件だった。


デートをドタキャンしたあげく、すぐ帰ると言いながらこんなにも遅くなってしまったのだから、今頃ジーナは相当怒っているだろう。


いや…もうとっくに愛想を尽かされているかもしれない。


勝手に約束して、勝手に破って、その度に必死で言い訳を考えて…そんなことを今まで何回繰り返しただろうか。


「どうするかな…」


両腕に余る花束を買って帰る…はもう何回も試した。


ちょっと値の張る指輪やイヤリングを買って帰ったこともある(それらは結局一度もつけてもらえなかったが)。


お詫びにとディナーに誘って、そこでまた連絡が入ってジーナを残して仕事に向かったことも多々ある。


今度こそはと急ぎの仕事を全部片付けて自分からジーナをデートに誘ったのに、デート当日に誘拐事件とは…


「…泣けるぜ」


もう一度深いため息をついて重い腰を上げたそのとき、


「レオン!」


聞き覚えのある声が聞こえてレオンは後ろを振り返った。


駆け寄って来たのは、赤茶色のポニーテールが特徴の女性、以前テロ事件で知り合ったクレア・レッドフィールドだった。


「クレアじゃないか。どうしたんだ?こんな所で…」


クレアは慌てていたのか、乱れた呼吸を整えてレオンに尋ねた。


「レオン、あなた"あの事件"のことを知らないの?」


「あの事件?」


「……」


クレアはしばらく黙り込んだ後、深刻な顔で告げた。


レオンが空港に到着する約一月前、ラクーンシティである事件が起こった。


突然死者が甦り生者を襲うという怪事件。


被害はあっという間に拡大し、ラクーンシティは死者で溢れ返った。


そして、政府が下したのはラクーンシティの消滅だった。


ミサイルによって瓦礫の山と化した街は、厳重に封鎖され、現在は軍隊による調査が行われている。


…変わり果てた街を見て、レオンもクレアも言葉が出なかった。


「……」


ゴーストタウンと化した街は、もう街と呼べるような状態ではなかった。


建物のほとんどが崩壊し、残っているのは残骸のみ。


数日前までここに人が住んでいたとは思えない程、酷い有様だった。


それでもレオンは記憶を辿りながら恋人が住んでいたアパートを探り当て、危険を承知で半壊したアパートの中へ入った。


「…ジーナ……」


焼き尽くされた部屋には、もう恋人の面影さえ残っていなかった。


レオンは瓦礫と化した部屋の中央に立ち尽くし、そのまま崩れ落ちるように膝をついた。

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