暗く深い奈落の底で、あなたの首に手を掛ける。 自然と零れ落ちる涙があなたの頬を濡らすと、あなたはいつものように微笑んでくれた。 こんな時まで私の心配ばかりする妹に、私は少しだけ呆れてしまったけど… あのとき感じたあなたの温もりを私は決して忘れはしない。 私の掌からあなたの温もりが消えたとき、私は初めて絶望という感情を知った。 いつも隣に居たあなたがいない。 ただそれだけのことなのに、私の世界は色を失い、何もかもが薄れて灰になっていく。 あなたを失った私は、いつか心の無い人形になってしまうかもしれない。 いっそこの心を捨てられたら、どんなに楽だろうか。 だけど… それでもあなたと過ごした日々を、私は忘れたくない。 日を追うごとにあなたがいない生活に慣れていく私がいる…。 あなたと過ごした日々が、夢の中の出来事のように徐々に薄れて消えていく。 あなたの存在が、私の中から消えていく。 消さないで。消えて行かないで。 どうかあなたという存在を、私の中に留めていて。 そうすれば、私達はずっと一緒にいられるから。 だから私は、この身に刻み込む。 あなたという存在を私の中に焼き付ける。 せめてこの心だけはあなたと一つであることを願って、あなたが好きだった蝶の模様をこの胸に刻み込もう。 たとえこの身が朽ち果てても、魂に刻み込まれた想いだけは失くさないように…。 no 次へ |