「雪…?こんな時期に雪が降るなんて…」 しんしんと降り積もる真っ白な雪をぼうっと見つめながら、入江京介は呟いた。 霧に包まれた森の中を彷徨い歩き、ようやく建物らしき輪郭が見え始めた頃だった。 「…どうして…」 不思議に思いながら視線を前に戻したとき、大きな門の前に人影があった。 「悟史…君?」 背を向けているので顔は見えないが、間違いない。 「悟史君、どうしてここに…!」 入江が雪の上に一歩足を踏み出すと同時に、悟史は門の向こうへと消えていく。 「!」 慌てて後を追い門の向こうへ足を踏み入れると、そこには古い大きな屋敷が建っていた。 玄関の扉が開いている所を見ると、どうやら悟史はこの屋敷の中へ入って行ったようだ。 訝しげに思いつつ屋敷の中に入ると、背後で玄関の扉が大きな音を立てて閉まった。 「ここは…一体…」 ぽつぽつと明かりが灯っているということは、廃屋ではないのだろうが、ずいぶんと荒れている。 廊下を歩く度に床が軋み、悲鳴のような音を上げる。 開いた扉から中へ入ると、そこは囲炉裏のある広間だった。 玄関側の左手には二階へ続く階段があり、右手にはハシゴ、奥には両開きの扉がある。 部屋の中を見回していると、二階の方から足音が聞こえた。 踏み外さないよう気をつけながら腐りかけた階段を上ると、箪笥の前に悟史がうずくまっていた。 まるで何かに怯えるかのように、頭を抱えて震えている。 「悟史君!」 とっさに駆け寄り、震える悟史の肩に手を伸ばした瞬間、目の前が真っ白になり意識が途絶えた。 no 次へ |