第五章 皆殺し編
□罰

「雪…?こんな時期に雪が降るなんて…」


しんしんと降り積もる真っ白な雪をぼうっと見つめながら、入江京介は呟いた。


霧に包まれた森の中を彷徨い歩き、ようやく建物らしき輪郭が見え始めた頃だった。


「…どうして…」


不思議に思いながら視線を前に戻したとき、大きな門の前に人影があった。


「悟史…君?」


背を向けているので顔は見えないが、間違いない。


「悟史君、どうしてここに…!」


入江が雪の上に一歩足を踏み出すと同時に、悟史は門の向こうへと消えていく。


「!」


慌てて後を追い門の向こうへ足を踏み入れると、そこには古い大きな屋敷が建っていた。


玄関の扉が開いている所を見ると、どうやら悟史はこの屋敷の中へ入って行ったようだ。


訝しげに思いつつ屋敷の中に入ると、背後で玄関の扉が大きな音を立てて閉まった。


「ここは…一体…」


ぽつぽつと明かりが灯っているということは、廃屋ではないのだろうが、ずいぶんと荒れている。


廊下を歩く度に床が軋み、悲鳴のような音を上げる。


開いた扉から中へ入ると、そこは囲炉裏のある広間だった。


玄関側の左手には二階へ続く階段があり、右手にはハシゴ、奥には両開きの扉がある。


部屋の中を見回していると、二階の方から足音が聞こえた。


踏み外さないよう気をつけながら腐りかけた階段を上ると、箪笥の前に悟史がうずくまっていた。


まるで何かに怯えるかのように、頭を抱えて震えている。


「悟史君!」


とっさに駆け寄り、震える悟史の肩に手を伸ばした瞬間、目の前が真っ白になり意識が途絶えた。

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