灯篭の明かりにぼんやりと照らし出される扉。 その前に澪は立っていた。 「お姉ちゃん…」 神社の抜け道から脱出に失敗し、大広間で我を失った樹月に襲われて逃げ出し、その途中で繭ともはぐれてしまい、澪は再び柏木家へと戻って来た。 姉の無事を願いながら中へと入ると、家の中はまるで廃屋のようにしんと静まり返っていた。 少し前までたくさんの村人がいたのに、今は人の気配すらない。 「みんな…殺された………このままじゃ私達も……」 大広間の惨劇を思い出して、澪は自分の体を抱いた。 「…お姉ちゃん……どこにいるの?」 立ち止まっていると嫌な想像ばかりしてしまう。 澪はぎゅっと手を握り締め、奥へと進んだ。 廊下を通り過ぎ、大広間に入ると、樹月に殺害された村人の死体が消えていた。 残っているのは大量の血痕と刀傷だけだ。 「……」 それらをなるべく見ないようにして、澪は坪庭階段に出た。 階段を上がりながらふと空を見上げれば、そこには重苦しい雲とぼんやりと浮かぶ月がある。 澪と繭がこの村に迷い込んでから、何時間経っているのかはわからないが、いつまで経っても夜は明けない。 もうとっくに朝になっていてもおかしくないのに、空には全く変化がなかった。 「夢でも見てるのかな……。それとも、本当は私達、もう死んじゃってるのかな……」 色々な事があり過ぎて、頭が上手く回らない。 何もかもどうでもいいような気もするし、何としても家に帰りたいとも思っている。 「何だか頭がぼうっとする……風邪でも引いたのかな」 額に手を当てながら、澪は三階廊下の扉を開けた。 no 次へ |