FAITAL FRAME〜刺青ノ聲〜
□終ノ刻 零-ゼロ-

それは偶然ではなく必然。

たとえどのような未来が待っていようとも、逃れる術などありはしない。

そして、全ては「零」に戻る―……



美しい鈴の音が聞こえたような気がして、螢は目を覚ました。


「……御園……か」


そこは桜の木のある丘の上だった。


その桜の木の下で幼い一人の少女がうずくまり、泣いている。


螢が近づくと、少女はゆっくりと顔を上げ、そしてどこか嬉しそうに呟いた。


『やっと来てくれた……』


ぼやけるように少女の姿が霧と化す。


その中から一匹の紅い蝶が宙を舞い、村の方へ飛んでいった。


誘われるようにその後を追って行くと、逢坂家前の通りを白髪の少年が通り過ぎた。


『ずっと待ってた……この時をずっと……』


囁くようにそう言って桐生家の方へ消えていく。


「…樹月……」


ぽつりと少年の名を呟き、螢は樹月の後を追った。


そして門の前まで来ると、そこに紗重が立っていた。


紗重はじっとこちらを見つめると、何かを悟ったように背を向け、門を開いた。


『必ず来てくれると信じてた……』


そう呟いて、紗重は橋を渡って行く。


ふと見ると、橋の向こうの門の前に宮司らしき人影が立っていた。


螢が門の前まで来ると、宮司たちは一礼して門を開いた。


その瞬間、黒い霧のようなものが辺りを包み込み、やって来た道を覆い尽くした。


「…隠さなくても、もう逃げはしないさ…」


どこか自嘲的な笑みを浮かべ、螢は柏木家へと入って行った…。

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