FAITAL FRAME〜刺青ノ聲〜
□六ノ刻 人柱-ヒトバシラ-

「因果…か」


そうぽつりと呟いて、螢は机の上にそっと黒い手帳を置いた。


これは山中で発見されたとき、澪と繭が持っていた持ち物の一つだ。


繭は山の中で拾ったと言っていたが、螢はその手帳に見覚えがあった。


「父親があの山で失踪し、今度は娘…。全く、何の因果だか…」


その手帳は十年近く前に失踪した澪と繭の父親、秋山操の物だった。


山へ入ったきり行方がわからなくなった繭を捜して山へ入り、そのまま繭と入れ替わるようにして行方不明になった。


手帳のメモによれば、彼は山の中である村に迷い込んだらしい。


しかしあの山にはそんな村は存在しない。


なら一体彼はどこに迷い込んだと言うのか。


もし彼が本当にメモにあった「地図から消えた村」に迷い込んだのだとしたら…


澪と繭もその村に迷い込んだのだろうか。


そして、そこで何かがあった。


あの明るく活発だった澪が、あれほどまでに変貌する何かが、そこにはあったと言うことか。


「……村……か。夢の中で見たあの村も普通じゃなさそうだったな」


思い出すのは少女が殺されたあの場面と、日本刀を振り上げる少年の姿。


あの少年が祭主…あの屋敷の当主なのだろうか。


だとしたら、彼はなぜあのような……


そこまで考えて、螢は重たい瞼を閉じた。



……ずっと待ってた……


必ず来てくれると信じてた……


……あのときの…約束……


…だから……


早く……私を………



「ここは……」


ふと気づくと、そこは柏木家の玄関だった。


しんと静まり返った屋敷に、人の気配はない。


「…とにかく、調べてみるしかなさそうだな。……ここが夢だとしても」


螢は深いため息をつくと、蝶が描かれた扉を開けて物置部屋に入った。

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