「…吊り牢の女性?」 自宅のリビングで真冬から昨夜の夢の話を聞いた螢は、手帳に新たな項目を書き加えながら訝しげな表情を浮かべた。 真冬は軽く頷き、続けた。 「深紅はその女性を助けようとしているようだった。…名前は由紀というらしい」 「由紀……。そう言えば、夢の中の屋敷で誰かの日記に、妹の身を案じるようなことが書かれてたな。もしかしたらその妹なのかもしれない」 「妹…?」 「兄と共に久世の宮を訪れたようだが、そこは男子禁制で妹だけ屋敷の奥に通されたらしい」 「ああ、そう言えば夢の中で見た古書に男は顔を隠すということが書かれてた。…でも、刺青の巫女とは一体……」 そう真冬が呟いたとき、螢はふと夢の中で見た青い刺青の女性のことを思い出した。 もしやあれが刺青の巫女…? 「そういや、眠りの家の他にどこかの村の夢を見たな」 「村?」 「俺の実家がある村に似ている気もしたが…異様な雰囲気だった。大きな鐘の音と、日本刀を持った少年がいて…殺される寸前で目が覚めた」 「!」 「柏木家とかいう大きな屋敷で、白い着物を着た繭によく似た少女がいて……ああ、そういや彼女の帯に紅い紐が巻きついていたような……」 「それってまさか双子祀りの…」 「ああ、かもしれないな。しかし、あの村と久世の宮に何の関係があるんだか…」 「……」 「とにかく俺はもう少し地元の双子祀りについて調べてみようと思う」 「そうか…。僕ももう一度深紅の日記を調べてみるよ」 そう言って真冬は席を立った。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |