「綺麗だね…澪」 「うん…」 小川の近くにある岩にお互いの背を預けて座り、澪と繭は微笑んだ。 幼いときに何度か遊びに来たことはあるが、こうして二人でゆっくりと過ごす時間は久しぶりだった。 「やっぱりここって何だか懐かしい感じがするね」 「そうだね。小さいときから、ずっと前から知ってたような気がして…」 「…ねえ澪、前世って知ってる?」 「前世?それってよく占いとかにある?」 「うん」 繭はこくりと頷いて、流れる川に目をやった。 「現世で出会った人は、前世でも出会ったことがあるんだって」 「じゃあ私とお姉ちゃんは前世でも双子だったのかな?」 「そうだったら…嬉しいな」 繭はにこっと笑って空を見上げた。 つられるように澪も空に目をやる。 「ねえ…澪」 「何?お姉ちゃん」 「私達……ずっと一緒だよね?」 どこか寂しそうな姉の声に、澪は一瞬訝しげな表情を浮かべるが、すぐに頷いて言った。 「当たり前じゃない。私とお姉ちゃんは、ずっと一緒だよ。…約束したでしょう?」 幼い頃、同じ場所で同じように約束したことを澪は覚えている。 「…うん…」 こくりと頷いて繭はそっと澪の手に自分の手を重ねた。 ふわりと姉の手のぬくもりが手の甲に伝わる。 「…少し名残惜しいけど、そろそろ帰らないとおばあちゃん心配するかな」 「そうだね…」 そう言って二人は立ち上がった。 と、そのとき、ふと川の向こうに立つ人影に気づいた。 光の加減で顔はよく見えないが、若い男性のようだ。 一体いつからそこにいたのかわからないが、男性はただ静かにこちらを見つめていた。 その姿はどこかおぼろげで、ぼんやりと立ち尽くしている。 「誰だろう…?」 「さあ……村の人…かな」 二人が不思議に思っていると、男性がゆっくりと口を開いた。 『此処に来てはいけない……』 「え?」 思わず澪が聞き返したとき、突然強い風が吹いて、二人は目を閉じた。 前へ 次へ [しおりを挟む][戻る] |