Wheel of Fortune〜紅い蝶〜
□六ノ刻 片割レ月

柏木家を出て再び蔵へと戻った澪は、樹月に当主の間の本棚について話した。


『仕掛け……やっぱり何かあったのか。他に何か気づいたことはないかい?』


澪はうーん…と首を傾げつつ本棚を思い浮かべる。


「そう言えば…何か文字が刻まれてたよ。何だっけかな……えーと、確か、紅贄がどうのって……それに、オヤシロさまって文字も」


『紅贄……』


樹月はしばらく黙り込んだ後、呟くように言った。


『紅贄は蝶となりて鬼を鎮めん……』


「え?」


『そうだ……確か兄さんがそんなことを……』


「どういうこと?」


澪が尋ねると、樹月は何か思い出したように顔を上げた。


『柏木家にある兄さんの部屋へ行ってみるといい』


「お兄さん?」


『坪庭のある階段から三階へ行くんだ。一番奥の椿の部屋へ。兄さんの日記を読めば何かわかるかもしれない。兄さんはあの本棚の仕掛けを知っていたはずだから』


「でも…勝手に見ちゃっていいのかな。日記って…ちょっと気が引けるんだけど」


澪がそう言うと、樹月は苦笑を浮かべて言った。


『仕方ないさ。それに、兄さんはそういうことには全くこだわらない人だからね。部屋の鍵だっていつも閉め忘れてるし』


「うーん、何だか叔父さんと似たような人だなあ…」


『叔父さん?』


「まあいいや。とにかく行ってみる」


『気をつけて。決して父さん達に見つからないように』


澪は頷いて柏木家へと向かった。

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