Wheel of Fortune〜紅い蝶〜
□五ノ刻 双子巫女

村人たちの追跡を振り切り、再び桐生家へと戻って来た澪だが、桐生家の玄関は固く閉じられ、脇戸も開かないままだった。


仕方なく蔵にいる樹月のもとへ向かい、事情を話すと、樹月はしばらく黙り込んだあと、格子の隙間から黒い鍵を差し出した。


「これは…?」


『柏木家の脇戸の鍵だよ。おそらく君の姉は深道から柏木家へ送られたんだ』


「柏木家?」


『村の奥に一際大きな屋敷が見えるだろう?あそこがこの村を取り仕切る柏木家だよ』


「そこにお姉ちゃんがいるの?」


『君達が"双子"だと知れているのなら、おそらく彼女は柏木家の座敷牢に囚われているはずだ。そこから救い出せれば、まだ助かる道はある』


「でも…牢の鍵は一体どこにあるの?」


『…可能性があるとすれば、二階にある当主の間だと思う』


「当主の間…?」


『そうだ、これを持って行くといい。柏木家の見取り図だ』


そう言って樹月は折り畳んだ紙を澪に渡した。


「ありがとう…」


澪は見取り図に目をやった後、少し迷ったが、樹月に聞いてみることにした。


「樹月君は…どうしてここに囚われているの?」


『!』


樹月は一瞬目を見開き、それから辛そうな表情で俯いた。


『…これは、罰なんだ。僕らは、犯してはならない罪を犯した』


「罰…?僕らはって…じゃあ紗重やあの千歳って子も?」


樹月は静かに頷く。


『僕らは村の掟に逆らい、村から逃げ出そうとした。…紅贄となる運命から、逃げ出したんだ』


「紅贄…?」


樹月はぎゅっと手を握り締め、顔を上げた。


『さあ、柏木家へ急ぐんだ。決して捕まらないように…』


「う、うん…ありがとう」


澪はお礼を言って見取り図を手に、柏木家へと向かった。

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