桐生家から地の橋へ下りた澪と繭は、ぼうっと灯る蝋燭の明かりを頼りに、薄暗い地下道、深道を歩いていた。 「村の地下にこんな洞窟があったんだね…」 「すごく深いみたいだけど…ここ、なんだか怖い」 「…あ、見てお姉ちゃん。向こうに何かある!」 しばらく進むと、縄梯子が掛かっていた。 どうやらここから立花家に入れるようだ。 「私が先に上がるね」 「気をつけて、澪」 力強く頷いて、まず澪が梯子を上った。 そっと天井の板をずらすと、そこは広い大納戸だった。 様々な物が置かれているが、人の気配はないようだ。 「大丈夫みたい。お姉ちゃん、いいよ」 下で「うん」と答える声が聞こえ、繭も大納戸へ上がった。 「ここが立花家…?」 「たぶんそうだよ。ここに紗重って人がいるんだ。早く捜さないと…」 そのとき、ふと廊下の方から話し声が聞こえて来た。 『聞いたか、この村に双子が現れたと!』 『皆、騒いでおるよ。村の者ではないようだが、見た者の話では園崎家の双子に瓜二つだったらしい』 『鬼隠しに遭うたあの家の者か…』 『何者かはわからぬが、双子がおれば儀式をやり直せる』 『すぐに捕まえろ!』 声と共に足音が遠くなっていく。 「やっぱりここも同じみたい…」 「澪…」 「…でも行くしかないよ。大丈夫、お姉ちゃんは絶対に私が守ってあげる」 澪は不安そうな繭をそう言って励まして廊下に出た。 人の気配がないことを確認して、暖簾の奥の部屋へ入ると、そこは桐生家と同じ双子部屋になっていた。 「この家…どうやらお隣さんと同じ造りになってるみたいだね」 「でも紗重さんはどこにいるんだろう…」 「うーん、私の勘では二階かな?」 「勘って…大丈夫なの、澪」 「大丈夫。私の勘は叔父さんゆずりで結構当たるんだから」 そうのん気な笑みを浮かべて澪は玄関に続く廊下に出た。 吹き抜けになっている時計のある広間へ入ると、二階の方からかすかに子供の泣き声が聞こえてきた。 それに混じって女性の声も聞こえる。 『大丈夫、きっと…きっと助かるわ。だから泣かないで。秋人さまは必ず戻って来てくれる』 『でも…』 『秋人さまが約束を破ったことなんて一度だってないもの。だから、大丈夫。必ず私達を救って下さる』 『……秋人さま……』 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |