「持ち出した…?」 「もしかしてこの人形のことかな…」 雛壇の陰から出た二人は未完成の人形を見て呟いた。 「茜って人が持ち出したみたいだけど…」 「…もう少し家の中を調べてみるしかないね。行こう、お姉ちゃん」 こくりと繭は頷き、澪と共に人形の間を後にした。 再び廊下に戻った二人は、二階を調べてみようと階段へと向かった。 ところが、廊下の角に近づいたとき、反対側から足音が聞こえてきた。 「み、澪っ」 「ど、どうしよう、どこか隠れるところ!」 ふと目についたのは暖簾の向こうにある扉。 二人は迷わず部屋へ飛び込んだ。 慌てて扉を閉めて鍵を掛けると、足音は静かに部屋の前を通り過ぎて行った。 「…あ、危なかったね…」 「うん…」 ほっと安堵のため息をついて後ろを振り返った瞬間、二人は小さな悲鳴を上げた。 なんと部屋の奥に人が座っていたのだ。 鏡台の前の座布団に、まるで人形のようにじっと座っている。 髪で顔はよく見えないが、まだ十歳くらいの幼い少女のようだ。 「あ……あの、ごめん…なさい…勝手に入って……」 しどろもどろになりながら澪が言うが、少女は振り向きもしない。 ただブツブツと小声で何か呟いているだけだ。 「……あの……」 もう一度声をかけてみるが結果は同じだった。 よく見ると、この部屋は他の部屋とはだいぶ違っていた。 置いてある家具も、小物も、全て二つずつ。 それも全く同じ物だ。 「…双子の…部屋?」 ぽつりと繭が呟いた。 現在二人が住んでいる叔父の家には、二階に澪と繭の部屋がある。 ベッドと机、それと少し小さめの箪笥が同じように二つずつ並んでいるのだ。 「…えーと……とりあえず、出ようか」 「う、うん…」 恐る恐る少女の背後を通り抜け、二人は玄関に続く廊下へ出た。 前へ 次へ [しおりを挟む][戻る] |