樹月から家紋風車の話を聞いた澪と繭は、村の中央通りにある桐生家へとやって来た。 どうにか村人に見つからずに中へ入ることに成功したが、それからどこへ行ったらいいのか全くわからない状態だった。 「あの人達、なんであんなに必死に私達を捜してるんだろう…」 「捕まったら私達、どうなっちゃうんだろう…」 「……あんまり考えたくないね」 そっと納戸から出て、二人はまた廊下を歩き始める。 ミシリという床の軋む音にさえ寿命が縮まりそうな気分だった。 「とにかく人形を探さなきゃ」 「でも…なんだかこの家、気味悪い」 ぽつりと繭が呟き、澪も寒気を感じて両腕をさすった。 それというのも、玄関から入ってすぐの部屋に、世にも奇妙な光景が広がっていたからである。 天井に渡してある何本もの縄からぶら下がった人形。 しかもそのどれもが首吊りの状態であった。 一体何の意味があるのかわからないが、不気味としか言い様がない。 樹月は人形に何かからくりがあるのではないかと言っていたが、あの首吊り人形を調べる気にはなれなかった。 部屋にもそれらしき仕掛けなどは見当たらなかった為、二人は早々に奥へと進んだのだ。 「…誰もいないみたい。この部屋に入ってみよう」 そっと澪が扉を開けると、そこは人形の間だった。 部屋の両脇に雛壇のようなものがあり、奥には巨大な人形が二体並んでいた。 その奥にはボタンのついた祭壇のようなものがある。 「何だかいかにも怪しいって感じだけど…」 「…ボタン押しても何も起きない…ね」 ボタンを押し込むことはできるのだが、特に何も変わった様子はない。 何か他に仕掛けがあるのだろうか。 「うーん…ところで、この人形、なんで頭がないの?」 澪の言うとおり、巨大な人形の片方は頭部がない。 「両腕もないみたいだけど…」 「作りかけって感じには見えないけどなぁ…」 人形には紫色の綺麗な着物が着せてある。 作り途中なら衣装までは着せないだろう。 「澪、誰か来る!」 「!」 繭が気づき、澪はとっさに扉の鍵を閉めて雛壇の陰に隠れた。 だんだんと足音が近づいて来る。 『それで、アレは見つかったんですの?』 『それが、まだ見つからないらしいわ』 『やっぱり茜ちゃんが持ち出したのかしら…』 『あの子、祭りの後からずっとあの調子だもの。気の毒だとは思うけど、気味が悪くて…』 『仕方ないわよ。本当に仲の良い姉妹だったんですもの。…それより、この村に双子が迷い込んだって話、本当ですの?』 『そうらしいわ。園崎の双子に似ていたと聞いたけれど…』 そんなことを話しながら足音は通り過ぎて行った。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |