Wheel of Fortune〜紅い蝶〜
□三ノ刻 綿流し

樹月から家紋風車の話を聞いた澪と繭は、村の中央通りにある桐生家へとやって来た。


どうにか村人に見つからずに中へ入ることに成功したが、それからどこへ行ったらいいのか全くわからない状態だった。


「あの人達、なんであんなに必死に私達を捜してるんだろう…」


「捕まったら私達、どうなっちゃうんだろう…」


「……あんまり考えたくないね」


そっと納戸から出て、二人はまた廊下を歩き始める。


ミシリという床の軋む音にさえ寿命が縮まりそうな気分だった。


「とにかく人形を探さなきゃ」


「でも…なんだかこの家、気味悪い」


ぽつりと繭が呟き、澪も寒気を感じて両腕をさすった。


それというのも、玄関から入ってすぐの部屋に、世にも奇妙な光景が広がっていたからである。


天井に渡してある何本もの縄からぶら下がった人形。


しかもそのどれもが首吊りの状態であった。


一体何の意味があるのかわからないが、不気味としか言い様がない。


樹月は人形に何かからくりがあるのではないかと言っていたが、あの首吊り人形を調べる気にはなれなかった。


部屋にもそれらしき仕掛けなどは見当たらなかった為、二人は早々に奥へと進んだのだ。


「…誰もいないみたい。この部屋に入ってみよう」


そっと澪が扉を開けると、そこは人形の間だった。


部屋の両脇に雛壇のようなものがあり、奥には巨大な人形が二体並んでいた。


その奥にはボタンのついた祭壇のようなものがある。


「何だかいかにも怪しいって感じだけど…」


「…ボタン押しても何も起きない…ね」


ボタンを押し込むことはできるのだが、特に何も変わった様子はない。


何か他に仕掛けがあるのだろうか。


「うーん…ところで、この人形、なんで頭がないの?」


澪の言うとおり、巨大な人形の片方は頭部がない。


「両腕もないみたいだけど…」


「作りかけって感じには見えないけどなぁ…」


人形には紫色の綺麗な着物が着せてある。


作り途中なら衣装までは着せないだろう。


「澪、誰か来る!」


「!」


繭が気づき、澪はとっさに扉の鍵を閉めて雛壇の陰に隠れた。


だんだんと足音が近づいて来る。


『それで、アレは見つかったんですの?』


『それが、まだ見つからないらしいわ』


『やっぱり茜ちゃんが持ち出したのかしら…』


『あの子、祭りの後からずっとあの調子だもの。気の毒だとは思うけど、気味が悪くて…』


『仕方ないわよ。本当に仲の良い姉妹だったんですもの。…それより、この村に双子が迷い込んだって話、本当ですの?』


『そうらしいわ。園崎の双子に似ていたと聞いたけれど…』


そんなことを話しながら足音は通り過ぎて行った。

1/6

no 次へ
[しおりを挟む][戻る]
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -