Wheel of Fortune〜紅い蝶〜
□二ノ刻 幽囚

村人たちから身を隠しつつ西へと向かうと、鳥居の向こうに石段が続いていた。


「この上が神社かな…?」


「…澪、何だか嫌な感じがする」


繭は両腕をさすりながら不安そうな顔をしている。


「とにかく行ってみよう」


澪はそう言って石段を上り始めた。


…しばらくして、頂上に辿り着くと、そこには古い神社があった。


入り口の扉には大きな蝶の模様が描かれている。


二人で力を合わせて重い扉を開けると、むっとした埃の臭いが鼻をついた。


「…奥に何かあるみたい」


ギシギシと鳴る床に注意しながら奥へと進むと、祭壇と小さな棚があった。


「祭壇の裏って言ってたけど…」


「…こっちかな?」


裏側へ回り込むと、確かに少年が言っていた通り、扉があった。


しかし扉には無数の札が貼られ、どんなに力を込めてもビクともしなかった。


「だめ…開かないよ、澪」


「どうしよう…。ここから外に出られるって言ってたのに…」


ため息混じりに呟いたとき、複数の足音が聞こえてきた。


「澪、誰か来るみたいっ」


「ここじゃまずいよ、祭壇の下に隠れよう」


二人は急いで祭壇の下に身を隠した。


…少ししてギイィ…と音を立てて入り口の扉が開いた。


『…誰もいないか』


『まさか抜け道を使ったのではあるまいな』


『いや、あそこは例の騒ぎがあってから良寛様が封じられたと聞いた』


『…墓地の方へ行ってみよう。この村のどこかにいるのは確かなんだ』


『そうだな…』


だんだんと足音が小さくなっていき、バタンッと音を立てて扉が閉まった。


「やっぱり封じられてるんだ…」


「どうしよう…他に出口なんて……」


「……とにかくもう一度彼に聞いてみよう。彼は他の村人たちとは違うようだし」


「…うん…」


二人は神社を出て蔵へと戻った。

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