村人たちから身を隠しつつ西へと向かうと、鳥居の向こうに石段が続いていた。 「この上が神社かな…?」 「…澪、何だか嫌な感じがする」 繭は両腕をさすりながら不安そうな顔をしている。 「とにかく行ってみよう」 澪はそう言って石段を上り始めた。 …しばらくして、頂上に辿り着くと、そこには古い神社があった。 入り口の扉には大きな蝶の模様が描かれている。 二人で力を合わせて重い扉を開けると、むっとした埃の臭いが鼻をついた。 「…奥に何かあるみたい」 ギシギシと鳴る床に注意しながら奥へと進むと、祭壇と小さな棚があった。 「祭壇の裏って言ってたけど…」 「…こっちかな?」 裏側へ回り込むと、確かに少年が言っていた通り、扉があった。 しかし扉には無数の札が貼られ、どんなに力を込めてもビクともしなかった。 「だめ…開かないよ、澪」 「どうしよう…。ここから外に出られるって言ってたのに…」 ため息混じりに呟いたとき、複数の足音が聞こえてきた。 「澪、誰か来るみたいっ」 「ここじゃまずいよ、祭壇の下に隠れよう」 二人は急いで祭壇の下に身を隠した。 …少ししてギイィ…と音を立てて入り口の扉が開いた。 『…誰もいないか』 『まさか抜け道を使ったのではあるまいな』 『いや、あそこは例の騒ぎがあってから良寛様が封じられたと聞いた』 『…墓地の方へ行ってみよう。この村のどこかにいるのは確かなんだ』 『そうだな…』 だんだんと足音が小さくなっていき、バタンッと音を立てて扉が閉まった。 「やっぱり封じられてるんだ…」 「どうしよう…他に出口なんて……」 「……とにかくもう一度彼に聞いてみよう。彼は他の村人たちとは違うようだし」 「…うん…」 二人は神社を出て蔵へと戻った。 前へ 次へ [しおりを挟む][戻る] |