ふと誰かの声が聞こえたような気がして、澪は目を覚ました。 「ここは……」 起き上がって辺りを見回すと、そこは民家の二階の廊下だった。 どうしてこんな所にいるのか…と思った瞬間、ガタッと階下で物音が聞こえた。 立ち上がって階下を覗き込むと、玄関へ向かう姉の姿があった。 「お姉ちゃん?」 姉はこちらを振り返ると、どこか一瞬悲しげな表情を浮かべたが、またすぐに玄関へと視線を戻してしまった。 「お姉ちゃん!」 「ごめん……でも、戻らなきゃ……」 そう呟いて姉は民家を出て行った。 慌てて階段を下り、玄関へ向かうと、扉の前に紅い石が落ちていた。 昔、叔父から貰った御守りである。 繭は赤い石を、澪は緑の石を持っている。 出て行くときに落としたのだろうか。 澪はそれをポケットに入れて姉の後を追った。 薄暗い通りを駆け抜けると、民家の角を曲がる繭の姿が見えた。 「お姉ちゃん!」 必死で後を追い声をかけるが、繭は振り向きもしない。 坂を下って広い場所に出ると、そこに大きな門があった。 繭は門へと歩いて行く。 「待って、お姉ちゃん!!」 門の向こうへと消える背中に手を伸ばした瞬間、大きな音と共に門は閉まってしまった。 「お姉ちゃん!!」 開けようとするが、鍵が掛かっているのかビクともしない。 門を叩いて叫んでも姉の返事は無い。 「どうしよう……お姉ちゃん」 どうしていいかわからずに困惑していると、ふと背後に人の気配を感じた。 振り返るとそこに数人の村人たちの姿があった。 『いたぞ!双子だ!!』 『逃がすな!!!』 鎌や竿を持った男達が澪を取り囲む。 「な、何?何なの?」 『決して逃がすな…!』 鎌を持った男がすっと澪に手を伸ばす。 「嫌!やめて!!」 澪はその腕を振り払うと、訳もわからぬままその場から逃げ出した。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |