FAITAL FRAME〜紅い蝶〜
□二ノ刻 双子巫女

ふと誰かの声が聞こえたような気がして、澪は目を覚ました。


「ここは……」


起き上がって辺りを見回すと、そこは民家の二階の廊下だった。


どうしてこんな所にいるのか…と思った瞬間、ガタッと階下で物音が聞こえた。


立ち上がって階下を覗き込むと、玄関へ向かう姉の姿があった。


「お姉ちゃん?」


姉はこちらを振り返ると、どこか一瞬悲しげな表情を浮かべたが、またすぐに玄関へと視線を戻してしまった。


「お姉ちゃん!」


「ごめん……でも、戻らなきゃ……」


そう呟いて姉は民家を出て行った。


慌てて階段を下り、玄関へ向かうと、扉の前に紅い石が落ちていた。


昔、叔父から貰った御守りである。


繭は赤い石を、澪は緑の石を持っている。


出て行くときに落としたのだろうか。


澪はそれをポケットに入れて姉の後を追った。


薄暗い通りを駆け抜けると、民家の角を曲がる繭の姿が見えた。


「お姉ちゃん!」


必死で後を追い声をかけるが、繭は振り向きもしない。


坂を下って広い場所に出ると、そこに大きな門があった。


繭は門へと歩いて行く。


「待って、お姉ちゃん!!」


門の向こうへと消える背中に手を伸ばした瞬間、大きな音と共に門は閉まってしまった。


「お姉ちゃん!!」


開けようとするが、鍵が掛かっているのかビクともしない。


門を叩いて叫んでも姉の返事は無い。


「どうしよう……お姉ちゃん」


どうしていいかわからずに困惑していると、ふと背後に人の気配を感じた。


振り返るとそこに数人の村人たちの姿があった。


『いたぞ!双子だ!!』


『逃がすな!!!』


鎌や竿を持った男達が澪を取り囲む。


「な、何?何なの?」


『決して逃がすな…!』


鎌を持った男がすっと澪に手を伸ばす。


「嫌!やめて!!」


澪はその腕を振り払うと、訳もわからぬままその場から逃げ出した。

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