FAITAL FRAME〜紅い蝶〜
□六ノ刻 呪縛

立花家から天の橋を渡って、桐生家から外に出た澪と繭は、樹月が閉じ込められている蔵へと向かっていた。


しんと静まり返る通りを歩きながら、ぽつりと繭が呟く。


『八重……本当に逃げるの……?』


足を止めて振り返ると、繭は訝しげな顔で澪を見た。


「澪、どうかしたの?」


「お姉ちゃん……今、何か言わなかった?」


繭はますます訝しげな顔をする。


「……ごめん、私の聞き間違い…かも」


そう言って澪はまた前を向いて歩き出した。


しかし、それからしばらくしてまた後ろからぽつりと呟く声が聞こえた。


『私達のせいだよ……私達が逃げなければ、みんな死なずに済んだのに……』


澪はもう一度足を止めて後ろを振り返った。


繭は俯いたまま何も言わない。


「……お姉ちゃん、しっかりして。きっともうすぐこの村から出られるから。そしたら、すぐにお婆ちゃん家に帰ろう?きっと叔父さんたちも心配してる」

しかし繭は黙り込んだままだった。


澪は不安になって繭の肩に手を置いて言った。


「私達はずっと一緒だから……。約束、したでしょう?だから、もう何も考えないで。私が絶対お姉ちゃんを守ってみせる。絶対に…」


繭はゆっくりと顔を上げる。


「何があったって、私はお姉ちゃんを置いてったりしないよ。もう…二度と、お姉ちゃんを一人になんかしないから。私がお姉ちゃんを守るから。だからもう…どこへも行ったりしないで」


「澪……」


繭はそっと澪の手を握り締めた。


「お姉ちゃん、行こう。もう少しだから」


「…うん……」


二人は固く手を繋いで蔵へと向かった。

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