FAITAL FRAME〜紅い蝶〜
□三ノ刻 秘祭

「さ、お姉ちゃん、早くこの家から出よう」


「あ…待って、澪。これ……」


部屋を出ようとする澪に、繭が何かを差し出す。


「さっき拾ったんだけど…どこかの鍵かな」


繭が差し出した札鍵には、蝶の模様が刻まれている。


「そういえば…玄関近くに、これと同じ模様の扉があった気がする。そこの鍵かも。…とにかく玄関に戻ってみよう」


「…うん」


こくりと頷いて繭は澪に鍵を渡した。


玄関へと戻って来た二人は外に出ようと試みたが、玄関は強い力で封じられており開かなかった。


「どこかに別の出口があるはず…。探すしかないみたいだね」


「反対側に行ってみる?」


繭が言い、澪はポケットから札鍵を取り出して扉に差し込んだ。


扉を開けると、そこは物置部屋になっているらしく、二階に続く階段と、奥へ続く廊下があった。


廊下へと向かって歩き出した瞬間、階段の上から何かが転がり落ちた。


「毬…?」


繭がそっと拾い上げ、階段の上を見る。


つられて澪も視線を向けるが、階段の上に人影は見当たらなかった。


誘われるように二階へと上がると、衝立が並んだ奥に頑丈そうな扉があった。


「澪…何か聞こえない?」


繭が言い、澪は扉に近づいて耳を澄ませた。


『どうにか例の儀式は済みましたが…園崎の方はまだ……』


『間に合わぬか……。ならばあの客人を使うか。一人だけでも捕らえられれば、時間稼ぎにはなろう。…よいか、あの男のように決して逃がしてはならぬぞ』


扉の向こうで去って行く足音と物音が聞こえ、声はしなくなった。


「客人…?」


その言葉に、澪は真壁という人物が記した本のことを思い出した。


良蔵という人物の兄を捜してこの村を訪れたようだが、客人というのは彼らのことだろうか。


「澪、ここ…もういたくない。早く出よう?」


不安そうな顔で腕を引く繭を見て、澪は小さく頷き、階段へと引き返した。

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