FAITAL FRAME〜zero〜
□第一夜 氷室邸

氷室邸。


古くは地方一帯を治める地主の家だったといわれている。


しかし住んでいた一家が行方不明になるなどの事件が相次ぎ、今は訪れる人もなく廃墟となっている。


そんな屋敷の門前に、僕は立っていた。


「…ここが…氷室邸。」


こうして立っているいるだけでも、門の奥から流れ出してくるただならぬ霊気に足がすくむ。


…昔から僕達兄妹は、他の人とは違う特別な能力を持っていた。


普通の人間には聞こえるはずのない声が聞こえ、見えるはずのないものを見てしまう。


俗に霊感と呼ばれる能力だ。


僕はそれとは別にもう一つ特異な力を持っているのだが…まあそれは今回の話とは関係ないだろう。


とにかく僕と深紅は霊感という力のせいで"ありえないもの"を見、感じてしまうのだ。


人込みにまぎれ通り過ぎて行く白い影や着物の少年、直接頭に響いてくるような音や悲鳴。


そんなものを感じてしまうのだ。


そしてこの屋敷は、そんな僕が絶対に近づきたくない場所だった。


何故…と聞かれれば答えに詰まってしまうが。


ただ…近づきたくない。


入りたくない。


一歩でも中に入ってしまったら、もう二度と出られないような気がする。


…しかし、それと同時に確信めいたものを僕は感じていた。


高峰先生はきっとここにいる。


この屋敷に囚われているのかもしれない。


それほど強い霊気を感じる。


「……。」


僕は意を決し、巨大な門に手をかけた。

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