FAITAL FRAME〜zero〜
□第三夜 傷痕

「ん……」


ふと目を覚ますと、そこは面の向こうで見た目隠しの間でした。


ゆっくりと起き上がった瞬間、私はびくりと肩を震わせました。


祭壇の近くに着物の男性が立っていたからです。


男性は私の存在に気づいていないのか、祭壇を調べています。


『やはりここが……だとすると、これで鬼の口の門が開く。急がなくては……』


そう呟いて振り返った男性の顔を見て、私ははっとしました。


どこかで見覚えがあるような気がしたのだけど、それが今はっきりとわかったのです。


男性は、兄さんの友人にとてもよく似ている。


…いえ、似ているなんてものじゃない。


着ている物こそ違うけれど、確かにその人。


兄さんとは大学時代からの友人で、私も何度か会ったことがあります。


若手ノンフィクション作家として活躍している人ですが、確かこの氷室邸のことを兄さんに教えてくれたのも彼だったはず。


同一人物?


でも、何か違うような気がする。


兄さんと清純さんのように、この人も…


男性はすっと私の前を通り過ぎ、部屋を出て行きました。


「…鬼の口……あの門のこと?」


ふと見ると、祭壇の中に奇妙な面が置かれていました。


「これは……」


目の部分に杭のようなものが刺さった面。


目隠しの面。


これで兄さんが入って行ったあの門が開くのでしょうか…。


と、そのとき、足に違和感を感じて、私はぎょっとしました。


足首に、両手と同じ、縄の跡が浮かび上がっていたのです。


これが何なのかはわからないけれど、強い殺気を感じる。


呪い…?


もしかして、兄さんも…


「…兄さん……」


どうか無事でいて…


そう願いながら、私は目隠しの間を後にしました。

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