目を覚ますと、そこは人形がたくさん並んだどこかの部屋でした。 部屋の奥には注連縄で封じられた白い着物の人形が置かれています。 「…私……どうしてここに……」 ふと何気なく手を額に当てたとき、私はぎょっとして自分の手首を凝視しました。 両手首に縄の跡がついていたのです。 はっとなって足首に目をやりましたが、縄の跡があるのは手首だけでした。 そのとき、扉の前にメモが落ちていることに気づきました。 拾ってみると、そこには兄さんの字でこう書かれていました。 "兄の書置き" 屋敷内で先生の物と思われるメモを発見した。 やはり高峰先生はここへ来たようだ。 玄関近くの廊下で白い着物の女性を目撃し、気がつくとこの部屋にいた。 この屋敷は他とは違う得体の知れない不気味さを感じる。 私の身にも何が起こるかわからない為、これを書き残す。 「兄さん……」 やっぱり兄さんも感じていたんだわ。 この…奇妙な感覚を。 この屋敷には何かある。 できることなら今すぐ逃げ出してしまいたいくらい。 でも、兄さんはこの屋敷のどこかにいる。 兄さんを置いて逃げるなんてできない。 必ず兄さんと一緒に帰るの。 私はそう決意して部屋を出ました。 すると、一瞬子供のような影が階段廊下の方へ走って行くのが見えました。 恐る恐るその後を追って行くと、大きな鏡の前に錆びた鍵が落ちていました。 その鍵を使い、廊下奥の扉からいけすの間へ出ると、奥へと消えていく男性の姿がありました。 兄さんにとてもよく似た着物姿の男性です。 「……」 私は少し迷いながらも、男性の後を追ってみることにしました。 あの人は普通の人ではないけれど、あの白い着物の女性のような敵意は感じられません。 何か私に伝えようとしている… そんな気がするのです。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |