ふと気づくと、僕は大きな門の前に倒れていた。 ここは鬼の口のようだが、なぜこんな所にいるのだろうか。 「……!、鏡は!?」 慌てて起き上がると、門の前に古い鏡が落ちていた。 割れているんじゃないかと不安になったが、鏡には傷一つなかった。 あのとき、神社で光ったのは一体何だったのだろう。 まさかこの鏡が怨霊と化したキリエの呪いを跳ね返したのだろうか。 「……ん?」 もう一度門の方へ目をやると、燭台の近くに日記の断片が落ちていた。 "松葉色の日記" 洞窟の奥には巨大な門があった。 もしやあれは古文書にあった「黄泉の門」なのか。 こんなものが氷室の屋敷にも存在していたとは信じ難い。 門の前には何かを納めるような窪みがあったが、これはおそらく宮司の手記にあった「御神鏡」を納める祠のようなものだろう。 しかし、御神鏡が納められているという神社には、何もなかった。 すでに誰かが持ち出したのか、それとも初めから何もなかったのかはわからぬが。 洞窟にはもう一つ道があり、こちらは外に続いていることがわかった。 これでこの屋敷から出ることはできるが、清純を救うことはできなかった。 もう少し早く来ていればあるいは… 日記はそこで途切れていた。 そこから先は文字が滲んでしまって読み取ることはできない。 しかし、黄泉の門というのは一体…… 「何だか……喉が苦しいような…」 そっと喉に手を当てると、きりきりと痛んだ。 手首に浮かび上がった縄の跡が、濃くなっているような気がする。 もう時間は残されていないようだ。 「…行くしかない」 僕は火の灯った蝋燭を取ると、それを燭台に移して洞窟の中へと入って行った。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |